虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
会えそうな人
「……はっ、天空エリアに地下エリア? いや、まあ地下エリアは落ちたからなんとなく分かるけど……天空もあるの?」
「らしいぞ。『天死』がいるらしい」
「天使か……可愛いのかな」
「そうなんじゃないか?」
今日の仕事も終わり、帰宅の最中だ。
拓真がEHOのし過ぎでクマができていたが、どうにか乗り切れたようだ。
土日と休みもあるし、ゆっくり休めよ。
そして恒例の情報交換。
俺は、上と下の座標について情報を提供しておいた。
下はともかく上は行くのが難しい。
知ってからドローンを飛ばしてみても、結界に遮られるのか上に行けなかった。
「かー、まだ初期地点でまったりしている奴に抜かれるとは……一生の不覚だ」
「俺、いちおう十七区画まで行ってるぞ」
「十七!? おいおい、トッププレイヤーには敵わないが、もうそれって中の上だぞ」
「ならお前は……二十か?」
「十五だよ……」
それだけ行ってれば充分だと思う。
しかも俺、どちらかと言えば行ったじゃなくて流されただし。
パーティーメンバーとだろうとちゃんと行けただけ、立派なもんだ。
……まあ、強制移動も含めれば、たぶん俺はナンバーワンになれると思うが。
「ほら、それより俺に情報を提供しろ。錬金術が凄い奴とか知らないか?」
「錬金術? まだ誰もできてねぇよ」
「分かってるって、それでも隠してる奴とかいないかを訊いてるんだ。どうせそういう情報も集めてんだろ?」
「……お喋り好きより情報集めてるって、本当にお前のコネは恐ろしいな」
いろいろとゲーム内の情報に詳しい拓真。
実は、裏で情報を売り買いする──いわゆる情報屋を営んでいるのだ。
いつかゲーム内で会えたら、有り余る多額の金で俺と家族の情報を絶対に売らないように脅して首輪を付けてやる。
お喋り好き、とは隠語だぞ。
「仕方ない、偶然の再会をしたかったんだけど……場所を言うから店に来い。ここだと言いづらいから」
「それなら要らん。俺のゲームスタイルは、お前も知ってるだろ?」
「頑なだな。瑠璃さんみたいに運良くないだろ。悪運だけだよ、お前は」
「誰が悪運だ。凶もある意味で運が良いって言うなら、俺はずっと平だよ」
「……ハァ。そう思うのはお前だけだよ」
何やら呟いた気もするが、辺りの音が騒がしくて聞こえなかった。
たとえ『超越者』に絡まれようと、たとえ島まで流されようと……あれ? 運悪いな。
とにもかくにも、LUCは0だがマイナスまで(あるか知らないが)いってるわけじゃないんだから、なんとかなるだろう。
「他の奴にはあったのか? 結構お前の知ってる人もやってるぞ」
「いや、お前に言った通りの引き籠りライフの真っ最中だ。たとえ街に行っても、普段は透明になってるから分からないだろ」
「……そういえば、イベントで優勝してからあの場所はどこだって訊かれるようになったしな。俺も知らんから売ってないが」
話はここから、アイプスルについての事柄に移行する。
しかし、他の奴らか……。
家族よりも先に会えそうな奴って、誰か居たかな?
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