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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

ボート改修



 アイプスル

 探検? ……結構経ってるんです。

 素材を片っ端から鑑定で調べ、どうにか食べられる物を選別したり。
 ドローンを飛ばして完成した地図を使い、自らフィールドワークに赴いては細かな分布まで調べ上げた。

「……がしかし、船は来なかった」

 あまりに何も来ないから不審に思っていたら、沖ノ島同様の設定付きかみやどるしまだった。

 船が来るのも古くから伝わる祭事の時だけであり、それが行われるのはまだまだ先とのことだ。

 結局、俺にはドンブラコしか選択肢が無いという状況に落ち知ってしまった……まあ、それも駄目だったけど。

「ファンタジー海流、潮の流れが全てあの島中心に渦を巻くようにできているって……。天然の牢獄だったな」

 来る者拒まず去る者掴む、それがあの島の正体であった。

 幸い漫画版のマボロシの島みたいな設定は無かったので、一度『アイプスル』に帰還したのが実状だ。



「ボートにジェットエンジンでも付けてみようか? いや、ここはやはり戦艦を造り上げる方が優先なのかも……」

 アイプスルの海の近くには、造船場が設置されている。
 ボートもこの場所で作成されたので、試運転用の海があるからすぐに可能。

 だが、まだヨットまでしか作成していないため……男として戦艦を造りたい心が燻っている。

「まあ、いざ造船となるとどの種類にするかで悩むから──宇宙戦艦!」

 海は海でも星の海、『真・世界樹』がいつか宇宙樹になったときは迷わず宇宙戦艦の造船を行うことにしよう。

 が、それはまだまだ後のことなのでとりあえず今はボートの改修を始めることにした。

「エンジンの最大速度が足りなかったから、脱出できなかったのもあるけど……一番の理由は制御だな。俺に巧みなコントロールはできないんだし、しっかりしないと」

 俺、いちおうDEXに能力値が割り振られているはずなんだけどな。

 自動制御のプログラムは『SEBAS』が作成中なので、それを使用する基盤の作成が必要となる。

「他には……ボートにも結界生成機能が欲しかったな。エンジンが魔力を勝手に集めてくれてるし、それを上手く利用するしかない」

 魔法エンジンの使用は、外部から吸引した魔力を元に行われている。
 俺の魔力だけだとすぐに廃人と化すレベルで魔力を使うので、辺りに迷惑が及ばない程度に徴収している(人造魔石も使用可能)。

 このゲームには悪魔の力を封印する海の石が無いので、今回のように魔物に襲われるのは必至。
 エンジンのコスパを図って余った部分に、結界を織り込む必要がありそうだ。

「潮さえ無ければ、そのまま進めたのに……あ、自分を固定して行けばよかったんだ」

 そもそも船を必要としないアイデアを思いついたりしながら、ボートを改造していく。


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