虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
VS水鉄砲魚
W5
古代人とあった滝壺を超え、まだまだ川に沿って移動していく。
今さらだけれどずっと西に流れる川ってのも、日本人からしてみれば新鮮だ。
どの川も最後には地盤が低い海に向かうので、北か南に行くからな。
「ま、そのうち南に切り替わるか」
五区画目、ちょうどプレイヤーがセーブ石の設置を目論む辺りだ。
だが、どうやら南に造るらしいので西に居る俺には関係ない。
つまり事件に巻き込まれない──嗚呼、最高だな。
W5は川幅がかなり広くなり、川の中を歩くことは既に不可能となっている。
速度が速まり、深くはないが足を取られてしまう。
魔物もいるので大人しく川の上から移動するのが正解だろう。
それでも魔物は現れる。
水鉄砲魚、とでも言えばいいのだろうか。
川から浮上しては、プレイヤーに向けて水鉄砲を撃ってきていた。
「ふっ、当たらなければどうとでもないのだよ……って、危なっ!」
何かが飛んでくる気がして慌てて避けてみれば──スピュンッと物体が俺の横を通り過ぎる音が聞こえた。
恐ろしくなって油の切れたブリキのように後ろを振り返ってみると、そこには小さく穴が空いた木があった。
……ちょうど、その魚の口の大きさ程の。
今、光学迷彩使っててもバレたんだけど。
え? スナイパーの勘? いやいや、いろいろとツッコミどころ満載だろ。
そんなスナイパー(魚)は再び水へ潜り、水の銃弾を補充しに行っている。
「不味いな。こんなときには、たしか……よし、あった!」
対策となるアイテムをとっさに探し、見つけて取り出した瞬間──水鉄砲が放たれる。
「ウォオオ! シールド!」
取り出したアイテムを展開し、前方に向けて構える。強い衝撃が体に響いて死に戻るのだが……まあ、それはいつものことなので置いておく。
シールドは何度も撃たれる俺を守り、移動に安寧を与えてくれた。
例え途中からマシンガンのような猛攻に変わろうとも、衝撃で死に戻るだけであって、シールド自体が壊れることはない。
しかもこれ、俺みたいな筋力値が1の者でも扱えるシールドなのだ。
「……ふぅ、止んだか」
しばらくすると、俺に勝てないのが分かったのか銃撃が止まる。
そして代わりに別の場所で、誰かの悲鳴が上がりだす。
「本当なら助ける必要はない……が、ちょっと腹が立ったし反撃といこうか」
ただただ殺されただけで終わる、というのもなんだかなあ……。
展開したシールドを閉じ、持ち手の部分を肩の前面に接着させる。
「──あばよ、水鉄砲魚共」
スイッチを押すと、先端から無数の銃弾が放たれる。
ただしこれは、鉄の塊ではなく光の粒子で構成された弾丸だ。
連続して放たれたそれらは、川を抉るようにして水鉄砲魚に襲いかかる。
「ふっ、他愛無い」
役目を終えたそのアイテムを仕舞い、俺は再び移動を開始する。
──その傘を仕舞って。
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