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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

セーブ石



 ポーションの納品も無事終えて、再び自由となった。

 ギルド長のお小言がやけに長かったが、さすがに『仙郷』に長居したのも俺が悪かったので大人しく全部聞いておいた。

 ただその際に一つ、気になることを言っていたんだ。

「──新都の建設ね~」

 生産ギルドは全ての生産に関わるギルドを束ねた統括ギルドである。

 正直、ただ無謀者どもが集まって蛮勇の限りを尽くす冒険者ギルドよりもしっかりと仕事をしていると言えよう。

 そんな生産ギルドに、プレイヤーが提案したらしい。

「プレイヤー、もうあんな所まで」

 五区画目に都を造るそうだ。

 周辺の国家には内政を好むプレイヤーが交渉に回り、すでに土地の権利と国家建設に関する事柄は済ませているらしい。
 ……お前ら、やりすぎだろ。

《旦那様、これは不味いですね》

「そりゃ不味いだろ。関係各所に迷惑かけてさ、上層部にだけ報告して済ませる? 一応でも一部のプレイヤーが親身に街の人たちに接触している国はいいけど……」

《たしかにそれもありますが──このゲームでは、別の星があります》

「あっ……」

 俺が懸念していたことについては置いておくとして、今は『SEBAS』が気付いたことについて考えるべきだろう。

 ちなみに簡単に纏めておくと、建国に際して一定以上の住民が必要だそうなのだが、それをいったいどうするか……といったところから派生する問題である。

 閑話休題はなしをもどそう

「……なるほど、それは問題だな」

《プレイヤーたちは復活座標指定魔石──通称セーブ石をクエストで手に入れたことで、今回の騒動が始まりました。このクエスト、まだそのプレイヤーたちしか情報を有していないレアアイテムでして。建国に関した話は掲示板で盛り上がっていたのですが、同様のアイテムを見つける手段が見つからず、PKプレイヤー専門掲示板では怪しいやり取りが続いています》

 要するに、ユニーク(限りがある)アイテムが見つかったが他の場所で見つけるのは困難なので、持ってる奴から奪おうという輩が現れるということか。

《他世界で活動するプレイヤーもこの情報は知っていますし、星の住民も送り出している諜報員から耳にしているでしょう》

「……うん、かなりヤバいな」

 ポーションに続き、今度はセーブ石を手に入れるための争いが起きるかもしれない。
 ポーションもセーブ石も、どちらにも共通する点がある。

 ──死兵を生む、この一点だ。

 セーブ石にはプレイヤーを呼び込んで街を繁栄させるというメリットがあるが、戦争国家などではこのような考えがとても分かりやすいだろう。

「……どうにかしないとな」

《ただちに密偵に情報を集めさせます》

「ああ、頼む」

 うちに置いてある百個のセーブ石、本当にどうしよっかな。


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