虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
闘仙 その16
帝国が攻めて来てから数日が経過した。
それ以降特にこれといったイベントも……無かったわけではないがまあ平和な日々が過ぎたといえる。
「……そうか、もう帰るのか」
「だいぶ長居をしましたので。そろそろ仕事の戻ろうかと」
「なら、また会おうか」
「ええ、またいずれ」
早朝の火口付近で俺と『闘仙』さんは別れの挨拶をしていた。
早朝なことに特に意味はなく、ただ帰りたいと思ったから帰るだけだ。
思い返せば、ダブル【仙王】が邂逅したり『闘仙』さんがはっちゃけたりと……いろいろとあったものだが、どれも後になって考えてみればいい思い出になっている。
無事この街にも店を用意できたので、仙人の食べ物も随時獲得できる。
あとはそうだな……仙法が使える道具――通称仙具の強化に成功したってことも良い思い出だな。
初代【仙王】がその際に襲いかかり、興奮した『闘仙』さんが戦闘狂らしく闘いを挑んでいたのも懐かしい。
まあ、そんな日々ともお別れ。
俺は一度ポーションの納品に行かねばならない……ギルド長、待っているらしいので。
連絡用に渡しておいた魔道具に最近泣きの連絡が来るようになったんだよ。
最初は優しく連絡し、だんだんと脅しチックになっていたのが……最後には懇願になる様子は少し面白かった。
が、俺も社会人としてそろそろ動かねばならないだろう。
なので本日仙郷を出て一時帰国することを決めたのだった。
「では、さような――」
「ツクル!」
「……【仙王】様、早起きですね。いつもは午後にならないと起きないという話だったんですが」
「たまたま目が覚めちゃって……って、そうじゃなくて。ツクル、もう帰るの?」
転位装置で帰ろうか、といったそのとき現【仙王】が現れた。
空間を操って瞬間移動もできるらしいからね、……若いのにチート盛り沢山だよな。
まあ、そんな【仙王】だが初代と会うことでより強くなりました。
全部の技術を吸収して今や最強の仙人の称号を欲しいがままの状態です。
「ええ、また来ますけど。『闘仙』さんに頼まれたことも終わりましたし、一度ゆっくりと家で過ごそうかと」
「……次は、いつ来るの?」
「どうでしょう? 戻ってくることは約束できますが、あまり早くはないと思います」
今や俺はなぜか彼女の親戚のオジさんみたいなポジションに就いている。
……そんな人がお尻を叩くかと聞かれれば微妙だが、前に俺はどんな存在かと誰かが訊いてそう答えていたし。
「約束! 約束して、また絶対来るって」
「分かりました、またいつか。依頼でも出したいただければ、すぐに来ますよ」
俺も昔、親戚にカッコイイと思えた人がいてよく会いたいと思っていたしな。
いつか戻ってくる時にはお土産をいっぱい持って来てやろう。
「では、また会う日まで!」
そう言って小型の転位装置を起動して帰還する。
本当に……いろいろなことがあったな。
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