虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
闘仙 その15
兵を下げさせた誰もいない部屋で皇帝は一人、考えに耽っていた。
(なぜだ! なぜこうなった。我が国の精鋭があれだけいて、何故たった二人の者に蹴散らされるというのだ!)
仙人の街への侵略は失敗、精鋭が率いた軍は撤退という結果で終わってしまう。
(……だが、仙人共は甘いな。一人残さず無傷で返すとは。やはり、殺生ができぬというのは本当か)
今度はどのような手で攻め入ろうか。
人を盾代わりにして進むのもよさそうだ。
そうして黒い笑みを浮かべる肯定……だがしかし、それを邪魔する者が現れる。
「こんなタイミングで申し訳ありません」
「だ、誰だ!」
皇帝はその突然の声に反応する。
瞬時に気配と魔力を索敵――しようとするが、自身の首元に魔法の籠められた短剣のような物があると知って動きを止める。
「おっと、動かないでくださいね。貴方の首にナイフが……失礼、少し傷をつけてしまったようですね」
「…………目的はなんだ」
「あの街へ二度と近づかないこと。それを誓約書に書いてもらいます」
後ろを振り返ろうとするがナイフが動くので確認できない。
気配も魔力も感じ取れない謎の死角に冷や汗をかきながら交渉を行う。
「貴様も仙人か、姿を現せ」
「嫌に決まってるじゃないですか。それよりほら、早く決断してください。さもないと、貴方の首が切れちゃいますよ」
「……そう、上手くいくと思うな!」
【皇帝】の能力である威圧を放ち、刺客の動きを止めようとする。
が、ナイフは変わらずその場に残る。
「馬鹿な! それほどまでに貴様は強いというのか!」
「……やれやれ、交渉決裂ですか。では仕方ありません」
「ま、待て! 分かった、分かったから。誓約書にサインする!」
「お分かりいただき、何よりです」
スッと首から離れるナイフ。
まるで死神の鎌のように思えていたナイフが取り除かれたことへ注意を払う皇帝。
それを気にせずに刺客は皇帝の膝の上に一枚の紙を置く。
「誓約書、九龍帝国としての歴史を持つ国家が仙郷を攻めた場合、国家における全権利が仙郷に与えられる……まあ、内容はこんな感じです。何もしなければ、問題ありませんよね? まずはご確認を」
皇帝は渡された誓約書の中身を念入りに確認する。
彼は愚かではない、状況を打破するための一手を見逃さないようにしていた。
「先に言いますが、修正はしませんよ。貴方方にもメリットがあるようにしてます、文句は死と同列だとお考えください」
「……そんなこと、考えるはずがなかろう」
「そうですか、それは何よりです」
誓約書を読み進める内にようやくメリットとやらが記された場所を見つける。
(……テナント? つまり、店を構えさせれば、多種族の技術を手に入れられると。いや待て、確認せねば)
「テナントというもの、これはいったい?」
「その種族では既に必要とされていない品を販売する店です。食料はもちろん、武具や魔道具もございます。それをどうお考えになるのかは、貴方次第ですが」
「……つまり、技術は」
「ほぼ最新、と言ったところでしょうか。この貿易を受けた国は、同様の発展を行っているでしょうが……」
(他国にもか! ……くそっ、選択肢が端からないではないか!)
「分かった、受けよう」
「ありがとうございます。――では、ここにサインをお願いします。魔道具で記入者を偽装しても無駄ですので、解除してからのご記入をお薦めしますよ」
「…………すまない、うっかり外すのを忘れていた」
こうして、仙人たちの知らぬ場所で密会が行われていた。
刺客がどのようにして皇帝のいる部屋に侵入したのか……それはこれから長く続く九龍帝国の歴史の中でも特に研究されるらしい。
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