虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
闘仙 その11
「……やられたな。まさか、いきなり戦場に出されるとは。実に不幸だ」
飛ばされたのは山で言う剣ヶ峰より内側にある斜面だ。
街が底で帝国が周辺を囲む……もう詰みの状態だと思う。
「あ、そうそう。メッセージをしなきゃならなかったな」
ポケットの中を漁り、拡声器を取り出す。
「街の者! 私が帝国の相手をしますので、防御を固めてください! まあ、たぶんどうにかなりますよきっと!」
言い終えると拡声器を仕舞って代わりにドローンを引っ張り出して宙に放つ。
調査用の物ではなく封印していた攻撃用のドローンである。
「さて、やはり来ましたか」
「――当然だ。『生者』、初代がまさかお前にそれを……」
「ええ、そのまさかですよ。ちょっと仙術をパクったから、ちょっと仙丹を奪ったからと怒られましたね」
「それは……仙人であるならば、誰でも起こると思うぞ」
そりゃあな、一市民として生活する仙人から仙丹を奪おうとは思わないさ。
それなら霧を吸収して変換した方が何十倍にも効率が良いからな。
だが、あの初代【仙王】はある意味で霧と同化していた。
だからこそ吸収してもいちおうは困らないのだが……まったく、ここまでしなくてもいいじゃないか。
「現【仙王】は隠していますか?」
「ああ、すまんが帝国の精鋭となると防衛に回らねばならんのでな」
「……そんなに強いので?」
「多少なら、俺でも圧勝だ。だが厄介なことに、今回は数で攻めてきた上に精鋭が紛れている。俺独りでは無理だ」
まあ、死亡レーダーにも物凄い反応があるからな。数にしておよそ十万、二つの意味で頭が痛くなる数の多さだよ(山が小さかったらもっと人数は少なかったのだろうか)。
その中で『闘仙』さんが精鋭だと思える数は……約百人。
覗き見をしている奴もいるようだがそれは軍師か何かか?
「配分はどうします? 雑魚だけなら、私の道具がどうにかいしてくれますけど、それでも四、五万が限界ですよ」
「なら、それ以外を半分半分でどうだ?」
「……仕方ない。生死はどうします?」
「あの街に住む仙人は、無為な殺生を禁じられている。今回の戦いで刺激を受けられては面倒だ」
つまり、生かさず殺さずでいけと。
ならモルメスは禁止、というより大量の試作品の使用は不可。
せっかくの戦いだというのに、さすがにそれではなぁ。
「『闘仙』さん、結界を張ります。火口の縁までですが、その中で死んだ者は縁の外で気絶した状態で戻ります。なので、早めに倒しちゃってください」
「……制限時間は」
「一時間程かと」
「それだけあれば充分だ」
新たに結界用のドローンを天に放ち、一つの結界を作動させる。
――非殺傷結界。
俺を苦しめた街の結界をこうして再現して使っていた。
さぁ、これで誰も死なないぞ。
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