虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
闘仙 その09
「――よし、これで充分だな。代わりの品は置いておいたんで、構いませんよね?」
『そう、だな。約束は約束だ。こちらとしても、とやかく言うつもりはない』
宝物庫の中には仙人専用装備やダンジョン内で死んだ人たちのアイテムの中でもレアなヤツが眠っていた。
それを片っ端から『SEBAS』に解析させ──その場でできた物はリリース、そうでない物のみテイクアウトすることを選んだ。
ちょっと数が多くて宝物庫の見栄えが悪くなったので別の物を置かせてもらった。
これで次に来る者も満足するだろう。
「あ、そう言えば一つ訊きたかったんですけど……いいですか?」
『まだ何かあるのか』
「今代の【仙王】、初代としてあのニートについてはどう思うんですか? 悪い娘じゃないけど、さすがに王としては……」
宝を漁っている間にこれまでやってきていたことは聞いた。
日本でも上皇とか法皇とかがいたのと似たようなものだろう。
あれは我欲の部分が多い気もするが、どういう存在になったか、という点だけ見れば似ているか。
まあ、【仙王】誕生の秘密とやらは中々面白かったのだが、どうにも今のあの娘がそれに適応しているとは思えなかったんだよな。
『今代の【仙王】か……多少気概に難ありだが、それでも仙丹を常に練り、仙術の修業は欠かさずこなす良い娘だと思うぞ』
「結構頑張っているんですね。私には仙丹を感じ取ることができませんので、さっぱり分かりませんでした」
『ならば、どうやって使っていたのだ……。あの娘は練った仙丹を隠す技術も持つ。並みの仙人でも気づけないぞ』
やはり天才、というものか。
凡人からしてみればちょっと優れた人は全員天才だし、仙人という人の枠を超えられたあの街の人全員が天才な気もするがな。
そもそも仙人の修業について俺はよく知らないが……なんだかアグレッシブに動かなくてもできそうなものが多い気がする。
ニートっぽかった今代の【仙王】にはある意味で最適だったのかもしれない。
「さて、ではそろそ――!?」
『……帝国の者か。どれだけ時を経ても、長の強欲さは変わらないな』
「帝国……九龍帝国ですか?」
『かつては頭の数も異なっていたがな。お主のように仙丹の秘密を暴こうとしている力が全ての国家だ』
なんともまあ、帝国という単語に相応しいような政治をしているんだか。
そりゃあそれっぽい奴がいれば衛兵さんもキツイ眼で睨むわけだ。
「街を救うことはできますか?」
『儂はこの場所を守護する。この場所を占拠されれば、街に被害が及ぶ。ましてやコアを奪われれば……街が消滅する可能性もある』
「つまり、上にいる者だけでどうにかしろ、ということですか?」
『…………何を言っているのだ? お主は』
そう言われた次の瞬間、感覚的に次の展開が察せてしまう。
嗚呼、テンプレ乙。
『頼む。負けたこちらがいう立場ではないことは、儂が充分に分かっている。それでも、それでも願おう。今回現れた者たちは、今までに偵察で来ていた者とは一線を駕す力の持ち主ばかりだ。――どうか、頼んだぞ』
「……拒否権は?」
『儂は親切だからな、もう用はないこのダンジョンから出してやろう。……そうだな、街の外辺りにな』
「テメェエエエエ!」
ツッコんだときには、もう足元から光が溢れていました。
……強制転位に、俺は愛されているのか?
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