虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

仙王 その14



「ひとーつ!」

 バシーン

「ひぅっ!」

「ふたーつ!」

 ビシーン

「ひゃぁっ!」

「みーっつ!」

 ベシーン

「……っ」

 声にならない声が、幼い少女の小さな口から洩れる。
 文字通り命を懸けた罰を与え、反省を促している……のだろう。
 確信が持てないのには、いくつか理由が存在する。
 俺、STR値1だからな。
 非力な俺が行った罰など、それこそ意味が無かったのでは? と思っています。


「あの、ツクルさん」

「はい、どうかしましたか?」

「どうして――尻を叩いたので?」

 お尻ペンペン、そう言った方が何だか心が痛まないな、と脳を誤魔化す。
 先に言っておくが、直接尻を叩くのは完全にOUTだと理解していますから(叩く時点でもはやOUTだが……)。
 日本でもしつけとして使われるこの方法、欧米諸国ではより広く使われているぞ。

 え? やった理由を早く言え?
 口約束じゃ駄目だと言われ、なぜか俺自身で行う罰にしろと(こっそり)『闘仙』に言われていたんだよ。
 なので、リーシーさんは俺に罰の内容を確認してきた。
 お尻ぺんぺんと言うと不躾な視線を向けたが、【仙王】が色々と苦悩する顔を浮かべているのを見て考えを改めたと思われる。

「すまなかったな、『生者』。嫌な仕事をやらせてしまった」

 いつの間にか戻って来ていた『闘仙』さんにそう言われる。
 はい、リアルだったら絶対に拒否していましたね。

「いえ、接触を拒まないと言うのなら、こういうことは部外者がやってしまった方が案外良かったのかもしれませんよ。……どうしてそうしなければいけなかったか、まったく分かりませんでしたけど」

「相手がどれだけ親身になったか、それは近くにいることで感じられる。俺の場合は拳を交わした者とそれを感じ合うが、【仙王】の場合を俺は知らん。だから、直接触らせて感じさせたのだ」

 ……『闘仙』さん、そんな理由だったんですか。
 俺、ただのセクハラだったみたいです。
 お巡りさん、私は脅迫されたんですよ。


 そんなこんなでお尻ペンペンの刑に処された【仙王】は現在、疲れ切ったのかグッスリと眠っている。
 何やら時々苦悶の顔を浮かべているので、物凄く罪悪感を感じています。

「……これで、私が頼まれたことは終わったと考えていいんですか? 結局、結界を破れるのがどこで役に立ったか分からなかったんですけど」

「…………ああ、本当はダンジョンに隠された秘宝を探してもらおうとしていたが……さすがに、頼み過ぎだと思ってな」

「秘宝、ですか」

「この地は、初代【仙王】がダンジョンを攻略した後に造り上げたとされている。そしてそのダンジョンの奥深くに、初代が隠したとされる秘宝がある……との噂がある」

 されるだの噂だの……曖昧だな。
 それから少しダンジョンについて話をしてから、今居る空間から脱出した。


コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品