虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
仙王 その10
しばらくすると、リーシーさんが『闘仙』さんを連れて戻ってきた。
二人とも少し疲れているようだが……何かあったのだろうか?
「戻りましたよ、【仙王】様とツクルさん」
「お帰りー」
「お帰りなさい」
「……『生者』、もう来ていたのか」
「ええ、入れ違いもありましたけど、ちゃんと来れましたよ」
『闘仙』さんとの会話を聞いていたのか、二人はポカーンとした顔をしている。
俺と『闘仙』さんをチラチラと見て、首を傾げて不思議そうにしている。
「ローさん、この人――ツクルって……」
「ん? 説明していなかったのか。コイツは俺と同じ『超越者』、『生者』の名を冠する男だ。『龍王』の結界を破り、『騎士王』とも対等に話すだけの実力がある」
「そ、そんなに凄いの!? ……でも、どうしても強そうに見えない」
何やら『闘仙』さんが詐欺に近い説明をしているが、ツッコんでも良いことはなさそうなので無視しておく。
だが【仙王】、それは正しいんだ。
その自分の感性を、信じてやることも大切だぞ。
「……『闘仙』さん、念のために訊いておきますけど俺を呼んだ目的は?」
「もう分かっていると思うが、この【仙王】についてのことだ」
「王座に戻す、らしいですけど……一体どうやって?」
「簡単だ――倒すんだよ、【仙王】を」
ちょっと説明をしてもらった。
この国では【仙王】はかなり偉いそうだ。
絶対王政、とまではいかないものの、引き籠りたいと言われたらそれを受け入れなければいけないぐらいには(子供の我が儘だな)。
力があれば良い、というわけではなく──仙丹云々の問題だそうだ。
現【仙王】である彼女は、仙丹が誰よりも練ることができる天才らしい。
その才を見抜かれて【仙王】という役割を引き継ぐまでは良かったのだが、王座に座っていることを嫌がり……現在に至ると。
「だが、【仙王】に言うことを聞かせられる場合もある。これまでの【仙王】にも似たような事態を起こす者がいて、その際の対応策として作られた方法だ」
「……ふんっ、そんなの無ければ良かったのに。せっかくのぐーたらライフが」
本当に迷惑という顔をしている【仙王】。
なるほど、こういう者が居た場合は確かに必要だよな。
「【仙王】は仙人たちの王。強力な仙術を操り、他の仙人たちの目標となる存在。故に強く賢くなければならない。その道を違えた場合、それを正す必要がある」
「……倒すことで、正すのですか」
「【仙王】は正式な手順で勝負を挑まれ、それに負けた場合は事前に提示された条件を呑まなければいけなくなる。俺はこれを使い、【仙王】に王としての義務を果たすことを提示した」
だが勝てない、だから頼んだと……。
いや、なおさら俺には無理だろ。
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