虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
仙王 その09
「…………Zzz」
「寝ないでくださいよ、【仙王】様!」
「あ痛っ! まったくもう、せっかく寝れそうだったのに……」
リーシーさんも布団の上から叩いているので、実際に痛いということはないだろう。
彼女たちの間にある信頼、それがそうした軽いやり取りをさせているのかな。
「しっかりと聞いてください。【仙王】様、ツクルさんが何を言っていたかちゃんと覚えていますか?」
「…………昼寝でもしないか?」
再び叩かれる【仙王】。
そこまでして惰眠を貪りたいんだろうか。
「いいですか、ツクルさんは『闘仙』様に頼まれてこの街に来たそうです……『闘仙』様の目的は、もうお分かりですよね?」
「うぐっ。……い、いや」
「ツクルさんは私の仙術程度ならば、あっさりと無効化していますよ。いかに【仙王】様と言えども、簡単に突破できる方ではありませんからね」
「ローさんめ、後で嗾けてやる」
リーシーさん、無効化できませんから。
むしろ死んでますから、貴女の仙術で。
と、いうより突破? あれ、ちょっと待って、この展開って……。
「とにかく、『闘仙』様を呼んできます。ツクルさんを呼んだ本人がいなければ、話ができませんから」
「いてらー、お土産もね~」
リーシーさんは、そう言って小屋から出ていきダンジョンに向かったんだろう。
――俺を【仙王】の居るこの場に残して。
それから気まずい時間が数分あった。
布団の中で包まっていた【仙王】だが、さすがにいつまでもその状態だと蒸れて熱かったと思われる。
「あー、暑い!」
突然そう言ってバッと布団から飛び出し、その姿を俺の前に曝け出す。
「ふー、涼しいねー。……あれ? まだそこにいたんだ。全然気づけなかった」
どうやら、俺がいることを忘れて出てきたようだ。
真っ白い肌と髪、アルビノというやつか。
その髪は野暮ったく伸びており、寝癖も付いている。
まあ、そこについては触れないでおこう。
俺がこの場に居るのは、あくまで『闘仙』がここに来るまで待つためだ。
決して、【仙王】の秘密を暴くためではないのだから。
「……【仙王】様、どうして『闘仙』は私をこの国に呼んだと思われますか?」
「そ、それは……その、難しい問題というか自分じゃできないことを代わりにやらせるかいっしょにやらせるためというか……」
「難問、ですか」
あの『闘仙』が、そう思う程のこと。
いちおうでも実力の一端を見ている身からすれば、そんなの厄介事でしかないと思うんだが……。
「ちなみに、その難問が何か分かります?」
王なのだから、国の問題くらい分かっているだろうと思い尋ねると――それは、あっさりと教えてもらえた。
「う、うん――アタシを、王座に戻そうとしているんだよ」
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