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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

仙王 その07



「ここが、現【仙王】様の住居です」

「こ、これはなんとも……」

 そして辿り着いた家屋、そこはどうにも感想を言い難い場所だった。
 だが、あえて言おうか――。

「暗いですね」

「家は持ち主によって、環境を変えるといいますが……まさにその通りです」

 つまり、持ち主である【仙王】が暗いと暗喩している、ということだろう。
 余所者にそんな話、して大丈夫か?

 家の外装を改めて説明すると、ボロボロの廃屋と言った感じだろうか。
 木製の窓はボロボロ、扉もガタついていているのが見て取れる。
 ……なぜだろうか、無性に修理したくなるこの感情は。

「あ、気にしないでくださいね。先に言っておかないと、ギャップに驚いてしまいますので。もう一度言いますが、中に居るのは否定はしますが王ですので」

「……は、はい」

 そこまで注意されるってのも、驚きだ。
 あの『騎士王』ですら、国に居る間はしっかりと責務を果たしているというのに。
 ここまで下の者に言われる【仙王】とは、いったい何者なんだろうか。

「では、入りますよ……」

 滑りが悪いのでガタガタと音を鳴らしながら、ウサ耳少女は扉を開けた。



 部屋の中は、意外と整っていた。
 蜘蛛の巣が張っているわけでも、埃で歩いた場所に跡ができるわけでもない。
 ただ、綺麗とは言い難い。
 物は散らかっているし、何処となく部屋が暗い感じがする。

「【仙王】様、起きてください。お客様が来ましたよ」

 ウサ耳少女は小屋の奥にある物……と思っていたナニカを揺らす。 
 本人の引き籠り度が関係するのか、殺気が無かったため気づけなかった。

「…………えぇ? 汝、今何時なの?」

「ダジャレなんて良いですから、今は光の九時ですよ」

 光の九時、これは午前九時のことを指す。
 このゲームだと午前を光、午後を闇と評しているのだ……数字は数字で変わらない。

「うーん、面倒臭い。ローさんにやらせておけばいいじゃん」

「『闘仙』様は【仙王】様がお仕置き部屋に送ったんではないですか。あのお方、反撃するって言っていましたよ」

「うげっ。またお日様の刑に処される」

 お日様の刑って、たぶん日向ぼっこをさせられるとかそんなんだろう。
 普通の人には呼吸をするように、日常として捉えられるその行動も、引き籠りにとっては吸血鬼が日の元に出るぐらいの覚悟が必要なことなのだ。

「……仕方ない、もう来てるんだしこのまま話せばいっか。それで、家の外で待っているの? なら、入っていいよ」

「【仙王】様、もういますよ」

「…………ふぇ?」

 部屋の奥でヒソヒソとウサ耳少女と話していたソレ――布団に包まる【仙王】は、モゾモゾと動いて俺を視認する。
 布団の中から見えたのは、左右で異なる宝石のような瞳の輝きだけだった。


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