虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
通天の晶洞 前篇
通天の晶洞
嵌められた……許可を出すとは言っていたが、そこまで連れていくとは一言も言っていなかったと後で気づいた。
『じゃあ、直接ダンジョンへ飛ばす。ゴールした場所にあるのが転移門だ』
『……へ?』
こんなやり取りをした後、『闘王』さんが何かを手に持って俺に向けると――本当に飛ばされていた。
マップを確認してもダンジョンに関する情報しか表示されず、現在地が『通天の晶洞』という名であることしか分かっていない。
「通天っていうぐらいだし、とりあえず上に登ればゴールに着くのかね?」
《超小型偵察機を使いましょうか?》
「……まあ、通気口があったらな」
ドローンとは違い、どんなに細い場所でも通れるようにした偵察機。
空は飛べないので、まだ試作段階だったんだが……そうも言ってられないか。
ここは仙人の住む場所へと繋がる、街からだいぶ離れた所にあるダンジョンだ。
その二つの要素があるだけで、生息する魔物の強さがただならぬものだとすぐ分かる。
実際、死亡レーダーもガンガンと遠くにいる危険な魔物たちを対象に鳴り響き、俺に焦燥感を与えていた。
「何回まであるか知らないが、手段を選ばなければ辿り着ける。……だけど、また目を付けられたりすると大変だしな。仕方ない、結界で弾いて、ゆっくりと素材回収でもしていきますかな」
鞘型に収めたコンパクトな結界装置、その結界は『龍王』さんの結界と同等の効果が認められている(by『SEBAS』)。
これがあればボス級の魔物でもない限り、結界に損傷一つ与えることは不可能だろう。
なので俺は大人しく、壁や床に散らばっている無数の素材を集めていくことにした。
ダンジョンの壁は本来なかなか壊れないらしいが、俺の創ったピッケルなら一振りで壊すことができる。
ダンジョン内の高濃度な魔力を吸い込むから硬いとのことだが、それ以上に硬い素材でピッケルを使えば問題なし。
「お宝、お宝、発掘、発掘~♪」
ピッケルを壁に当てると、当たった箇所を中心に周辺が抉れ――正方形のキューブとして地面に落ちる。
うん、どこかで見たことある! と言われそうなロマンアイテムさ。
ガンガン掘り進め、キューブはポケットの中に突っ込んでいく。
全て同じ石のキューブとして扱われる今なら、何個入れても無限に収まるのだ。
「ふははははっ! 魔物に勝てないのなら、道を掘って進めばいいじゃない!」
通気口も少し探したが無かったので、一度外に出てみようと思う。
全く、せめて入口に飛ばしてくれればいいものの……なんで小部屋に送るんだよ。
愚痴を零しながらも、体を動かしていく。
そして気づけば――数十分が経過した。
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