虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

守護域



 アイプスル

 結局、必死に説き伏せることになった。
 外に行ってもプレイヤーたちが蔓延っていると説明したところ――「タビビトのような奴らが大量に!?」と驚いて延期となったのが結末である。
 プレイヤーという存在は、NPCたちからすれば異常でしかないだろう。
 どれだけ殺しても蘇り、彼らだけにしか使えない特別な情報網(掲示板)を駆使して動く怪物たち。

 まあ、対プレイヤーの装置も暇潰しで作成したことがあるから渡しても良いが、まだ強くなる予定らしいし、そっとしておこう。


 再び帰還した自身の拠点にて、ふかふかのベットにダイブしてから呟く。

「しかし、この世界も箱庭になるのかね~」

《クローチルに守護を任せた地域など、既に制御を離れた領域があります。全てを自在に操れない、という点で、この世界は異なる存在と化しております》

「風兎が屋久魔杉の辺りをやってるんだったよな。今回解析した箱庭の核って、あそこの神壇と似た効果を持ってるのか?」

《そうなります。箱庭の核はあくまで補助、守護獣が自身の力を以って領域を支配していれば、核は無くとも問題ありません。クローチルは神壇を触媒として使い、あの辺りの森に限り、より緻密な制御を行っています》

「……凄いんだな、風兎って」

 人参に釣られる、癒し系ツンデレってわけじゃないんだ。



 この冒険で、俺は何を得たのだろうか。
 箱庭、と一言で纏められてしまうのだが、それでは味気ない気がしてならない。
 あそこでの日々は楽しくあったし、言葉にならない感想もある。
 彼らが有する命を引き換えにする技術とやらは、残念なことにスキルであったため習得できなかった。

 俺、普通に自力でスキルを習得できないみたいなんだよね。
 エルフの隠れ里でもそう言われており、称号以外でのスキルの使用は絶望的らしい。
 まあ、機械と魔道具、それを合わせた装置があればどうにかやっていけるので、別にスキルは無くてもいいんだけどな。

「結局、俺自身が強くなるのは難しいんだよな。MPとDEXの極振りが終わることはないだろうし、むしろ魔力で身体強化をした方が強くなるんじゃないか?」

《HPに補正は入りませんので、肉体が耐えられずに崩壊します》

「器用値を上げているのに、どうしてなんだろうな」

 手先が器用だろうと、動かす体が使いものにならなければ意味がないだろう。
 望んでいた大車輪も、未だに補助装置なしではできていないのだから苦難の道である。

 早く、強くなりたいものだ。


コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品