虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
箱庭奪取 後篇
貼ってから数分後、連絡が届く。
《プログラム改変完了。詳細はタブレットに記録してあります》
「ありがとう、『SEBAS』。……おい、ヘノプス! 終わったぞ」
『……信じられない、ほんの数分で全てを改変し終えるとは……』
「俺の力じゃないさ、頼もしい執事に頼ってみただけだ」
《お褒めいただき、光栄です》
今『SEBAS』がいなくなれば、恐らく『アイプスル』は滅ぶしこの箱庭も崩壊することになるだろう。
それほどまでに、『SEBAS』の行った調整は完璧だったのだ。
先代の残した『死の灰』に関する設定を、SPを上手くやりくりしてカバーしていた。
その結果、火山は噴火するが『死の灰』を生み出すことはなくなり、余ったSPで火山の改変に成功する。
詳細は……また後日。
「じゃあヘノプス、元の場所に帰ろうか」
『ハッ! 承知いたしました』
「……うーん、やっぱり堅いな。さっきみたいに適当で良いぞ、強制じゃないけどゆっくりそうしてほしい」
『そうです……そうか。できるだけ、頑張ってみましょ……みるか』
敬語は『SEBAS』だけで充分だ。
ヘノプスには、普通に話してほしい。
◆ □ ◆ □ ◆
それから行きと同じ道を辿り、再び湖の畔に戻ってくる。
擬似太陽が空で輝いており、暖かな光が湖で(心が)冷えた俺を温めてくれた。
『では、儂は湖に戻ろう。何かあったならすぐに呼んでくださ……くれ』
「ああ、そうさせてもらうよ」
ヘノプスが水中に潜っていく姿を見届けると、転位装置を使って火山に移動する。
そこに置いてある装置を使い、再び箱庭を調査するためだ。
「すぐにドローンを箱庭の核とリンクだ。解析を忘れないでくれ」
《承知しました》
まあ、『SEBAS』の設定に不備が無いことは分かってるんだけどな。
急速なSPの変動が起きた火山や、古代人たちの居住区などを調べたいし……。
――面白い場所を見つけたから、そこについての情報を集めたかったんだよな。
◆ □ ◆ □ ◆
そして、古代人の要塞に再び移動する。
「――というわけで、『死の灰』が降ることは二度とないと思う。箱庭の外に代表たちは行けるようになったと思うが、かなり強い魔物が穴を塞ぐように待ち構えているから注意した方がいい。それと、ヘノプスを蘇らせておいたから、何か便宜して貰えないか後で訊いておこう。正確な強さが分からないから上手くいえないが、多分魔法で運べる数の者では勝てないからな」
「ちょっと待て、いろいろと待つんだ。タビビト、あの数時間にいったい何があった」
「いろいろとあったんだよ、いろいろと。外に出るのも良いと思うが、この世界とはだいぶ勝手が違うぞ。たぶん、こっちに居た方がいい」
そう言って、とりあえず通貨などのことを教えておく。
この箱庭、物々交換が主流だからな。
そのままにしておいたら、街に出て事件を起こすかもしれない。
正直、箱庭の改変よりも代表に世界の外の情報を教える方が時間がかかった。
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