虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

古代人



 地図で見た北の区画には、高山地帯が続いていた。
 中央の火山よりは低いが、それでも高い山が軒を連ねている。
 空では嘴翼竜とも呼べるプテラノドン的な魔物が飛び回り、クエクエと鳴いていた。

「人間という因子ファクターが無いから、実に自然豊かな世界が広がっているな。いやはや、本当に広大な箱庭だ」

 純粋な弱肉強食。
 魔力が世界の理に混ざろうとも、それだけは決して変わることのない法則だ。
 ただ人間だけが、それに逆らった。
 知性を介し、己が身に余る力を得る術を手に入れたが故に理に背いた。

「言い方だな、全く。だが、飛ぶための翼を手に入れ、潜るための器を手に入れ、地を統べるための兵器を手に入れた」

 それぞれ飛行機、潜水艦、銃火器をイメージしてくれると簡単だ。
 どれもこれも、本来の人間のスペックでは行えないことをなしてきた。

 故に人は、世界に覇を成したように思えているのだ。

「だから嫌だなー。この箱庭に人が居るってのは。自分は別だけど。……しかし、現実は嫌なことこそ起き易いんだよなー」

 死亡レーダーはそれを俺に知らせた。
 ……嗚呼、やっぱりか。
 世界に大きな変革を加えるのならば、確かに人を入れることは良い選択だ。
 これまでも、これからも、人は世界を変えて来たのだから。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 はい、既に周囲を囲まれております。
 頭に骸骨を被ったり、血化粧をしていたりと特徴はあるのだが……一番はあれだ、衣装が大胆だってことだな。
 そんな彼らに捕まっている、しかしいろいろと思うことがある。

「――――――!」

「え? なんだって?」

「――――――ッ!!」

「刺すな刺すな、死んでるから」

 どうやら剣草や槍草は、古代人にも人気のようです。
 張っていた結界を破ろうとしているのか、ガンガンと草をぶつけている。

「――――!」

 何を言っているのか分からないのは、彼らの言語に問題があるからだろうか。
 ……実は、タネがある。

「はいはい、ちょっと待ってろよ……そろそろ解析できたか?」

《解析完了。『古代人語:箱庭01』として登録しました》

「あいよ、じゃあ設定するわ」

 タブレットを操作し、『SEBAS』が告げた言語を見つけ出す。
 そして、それをタップすると――

「おい、早くこの見えない壁を消せ!」

「あーあー、うん。やっと繋がった。初めまして、私はただの旅人でございます」

「タビビト? そんな奴、知らない」

「……とりあえず、食べ物でも食べます?」

 どんな場所でも、食べ物は共通のコミュニケーション方法だ。
 まずは、彼らに矛を収めてもらおう。


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