虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
古代世界
「見ろ! 光だ! 出口が見えたぞ!」
時計機能を使うと、何だか独りでいる自分が虚しくなりそうなので使っていない。
あれから体感的にはかなりの時間が過ぎ、ついに俺は光源を視認することができた。
暗かった穴も明るく見え、心なしか水温が温かくなった気もする。
「本当は空気がって言おうとしたけど……空気無いしな」
慌てずに、ゆっくりと出口である広い水場に出ようとする。
……うん、死亡レーダーは周辺に俺を害する存在はいないと告げている。
出た瞬間キル、なんてことはなさそうだ。
「出てったらまず、ドローンを飛ばすか? いや、先住民の方がそれに不快感を示したら危ないか。しっかり交渉しないと」
恐らくまだ誰も来たことのない秘境の地。
これぞ冒険、これぞロマン、これぞ憧れていたゲームの世界だ。
……言っていることには、ファンタジー感がないけどな。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
???
「えっと、ここは何処だ?」
水面に浮上した俺を迎えたのは、視界いっぱいに広がる大自然であった。
広大な土地に多種多様な生物が住み、この場所でのんびりと過ごしている。
遠くで動くブラキオサウルスのような巨大な生物も、自身の体に見合った木々の葉をモシャモシャと食べていた。
「恐竜時代……というか、白亜紀か? あんまり知らないけど、恐竜がいるし」
一人ブツブツと唱え、周辺を調べる。
ドローンを宙に放ち、『SEBAS』へと情報を還元していく(恐竜時代ならドローンを使っても構わないだろう)。
「人っ子一人いないってのも、地球と似ているのか? でも、魔力が有る世界だし、もしかしたら(ザクッ)……ん?」
報告を待っていると、突然胸にぽっかりと穴が開いた。
調査のために結界を解除していたのだが、まさか殺されるとは……。
即座に死に戻りを行うと、カランカランと俺を殺した物が落ちる。
「これは……鋭い葉っぱか。敵意や殺意が無かったってことは、人為的に起こされたことじゃなくて、自然現象の一部ってことになるのか? ……え? 殺してくるの?」
それは槍のような形をした、鋭い葉っぱであった。
手に持ってみると、木槍のような硬さを感じられる。
「魔力が有る世界で成長すると、そんな不思議なことになるのか。ダンまちの天然の武器庫みたいな感じなのかな? いや、魔物が使用しているわけじゃないけどさ」
元が葉っぱだからか、俺が装備しようとしても問題無い軽さであった。
しばらく振り回したが死ぬこともなく、少し得した気分でもある。
……穂先に俺の血が無ければ、もっと純粋に喜べたんだけどな。
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