虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
神像 後篇
カンカンカンと、部屋の中に木霊する。
左手で握ったそれを斜めに構え、右手で握るある物で、強く叩いていく。
……説明がし辛い。
もっと簡単に、内容を暴露した方が早い気がするな。
目の前には巨大な石柱。
左手には鑿、右手には金槌。
突き刺すつもりで鑿を石に当てて、刃先の角度を合わせて石頭を叩く。
「……先はまだまだ長くなりそうだな」
用意した素材があれだったのか、最高級の工具を用いても石はなかなか削れない。
∞の能力値というものも、俺が意識できる範囲でないと性能を発揮しないのだろう。
「称号の効果が発動しているなら、無双するぐらいの力を出している筈だしな」
例えばSTRの称号『豪腕無双』。
貰えるスキル(物理威力増幅・極)は、与えたダメージを乗数で倍増させるらしい。
……うん、俺のSTRが1でなければ恩恵に肖っていたな。
現実では、そんなチート級スキルすらゴミスキルとしてしまう持ち主の元にある。
無限の力のほんの一部しか使えず、イメージ通りにことを進めることもままならない。
「えっさ、ほっさ、神像、発作」
呼吸に合わせて金槌を叩き、奥深くに鑿を喰い込ませていく。
削りに削って削りまくるが、DEX値の∞だけは俺に力を完全に委ねてくれている。
完成したイメージを行うだけで、叩いた場所は正確に削りたい部分だけを削っていってくれた。
「えっさ、ほっさ、神像、発作」
カンカンカンと音を鳴らし、神像を一から削り出していく。
さて、神父さんは気に入ってくれるかな?
◆ □ ◆ □ ◆
「――どう、ですか?」
しばらくして、完成した神像を神父さんにお披露目してみる。
だいぶ時間を費やしたようで、気付けば空に昇っていた日は月に変わっていた。
「…………」
神父さんは俺の削った神像をじっくりと眺め、何かを思案している。
やってはいけないことでも、してしまったのだろうか。
「…………ツクルさん、一ついいですか?」
「はい、答えられることであれば」
「貴方の彫り出したこの神像、何か参考にした存在があるので?」
「いえ、特には。何かありましたか?」
そう答えると、再び熟考に戻る神父さん。
いや、本当に俺は何をしてしまったのさ。
「……ありがとうございました。恐らくこの神像に再び祈ることで、ツクルさんの目的は達成されるかと」
「やってみます」
言われた通りに再び祈りの構えを取ると、ピコーンと気の抜けた音が鳴った。
瞑っていた瞼を開き、目の前に表示されているであろうクエストを見る。
「……え゛?」
そこに記された文字は、俺にそのような反応をさせた。
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