虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
名声値
個人から頼まれる依頼を受けるには、名声値と呼ばれる隠しステータスが必要となる、というのが廃人の見解だ。
善行であれ悪行であれ、プレイヤーが行った行動は名声値としてカウントされる。
善行が多ければ多い程、地域に寄り添った依頼が受けやすくなる。
悪行が多ければ多い程、暗部に関わった依頼に関わる必要が増えていく。
また、どちらにだろうと数値が高ければ高い程、依頼が影響を及ぼす規模が変わる……そう考えられている。
一部の依頼は異なるらしいが、そうした依頼こそ散々関わっているので今更説明する必要もないだろう。
「……うん? なら俺の名声値ってどうなってるんだ?」
一つずつ、所業を思い出してみよう――。
ポーションの販売契約を結んだ――生産ギルドが、俺のポーションの危険性に気付いた故の契約だ……アウトで。
死神様の試練――これは特に、人々には迷惑を掛けていないし問題ない……セーフで。
『超越者』による捜索――嗚呼、かなりの人々に知られたな……アウトで。
『騎士王』の依頼――初期地点の街には関係ないと思うが、王からの勅令を果たしたというのは良いことだろう……セーフで。
E3の森を転位――うん、絶対アウトだ。ただ、これは一応取引をしたはずだから……いちおうセーフ?
紳士との販売交渉――あれはそもそも、俺が原因だからな……アウトで。
イベント中――封印を解き放ってレイドバトルを独占……アウト。
貿易――俺としては様々な素材が手に入ってWinだし、各村の村長たちもそれぞれの思いを元にWinを得ている。生産ギルドだけは少し損をしているが、それでも益が入るようにしている……せ、セーフで。
「結果は4:4だ。『SEBAS』、つまり俺は悪いことはしていないってことでいいんだよな?」
《……そう、でございますね》
……うん、今の反応で大体分かった。
大まかなことだけを挙げればこんな感じで済んだが、『SEBAS』だけが知っている舞台裏を考えるともっとアウトなのだろう。
「『SEBAS』、風兎って俺に依頼を出せたんだよな。なら、アイツに頼めば何個でも依頼をできるのか?」
《その答えは確認済みです。アイプスルでは旦那様の方が立場が上のため、不可能だというのがクローチルの回答でした》
「……ズルは駄目ってことか」
風兎ことクローチル、元は森の守護者であり聖獣の眷属だったそうだ。
元の立場的に発注も可能だと思ったんだけど……というか、そもそもそれでは街の人々からの名声値など変わらないだろう。
こうして依頼を受けるために四苦八苦していた日々。
――それが終わるのは、意外とすぐのことだった。
「SF」の人気作品
書籍化作品
-
-
76
-
-
112
-
-
516
-
-
267
-
-
59
-
-
4112
-
-
361
-
-
1980
-
-
2
コメント