虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
スイッチ
暇も潰せてストレス解消。
街に戻って契約をこなすため、作った劣化ポーションを納品していた。
「はい、納品完了しました」
「そろそろ依頼をくれたりなんか――」
「しませんよ。お出口はあちら、早く次の方に代わってください」
「……はい」
ギルドに行くたびに受付嬢に頼み込んでいるんだが……全く受け付けてもらえない。
この納品依頼が難易度MAXに登録されているので、それをやっている間はクエストを受けられない、それが生産ギルド側の主張であった。
一時は依頼を求めて彷徨った末に、死神様に会うことになるという貴重な経験をしたのだが、そんなレアケースは一度きりだ。
というか、俺の受けた依頼は普通の物と異なり過ぎている。
神の試練だったり、異国の王様からの依頼だったり、魔物への贖罪だったり、エルフの長老からのお使いだったり……。
最後のは簡単そうに聞こえるが、実際には『超越者』から『超越者』への橋渡しが目的だったので普通とは言えないだろう。
「うん、全然普通の依頼を受けてないな」
……いや、そもそも俺にとっての普通とは何なんだろうか。
ギルドで依頼を受けるということはもう無理で、街の中に居る者から頼まれるのは別のプレイヤーたち。
直接魔物の素材を卸している店の店主もいるが、それは依頼ではなくただのギブ&テイクだし(俺は素材を渡し、店主はそれで何かを作る。頼み事ではない)。
「本当、誰かから頼まれる依頼ってヤツを、一度でいいからやってみたい――」
「おお! 『生者』では――」
「……(ポチッ)」
何処からか聞き覚えのある声がした気もするが、ボタンを押すと一瞬で掻き消える。
バージョンアップを重ね、対『騎士王』対策も強化されている(色んな意味で)。
今回の場合、ボタンを押すと暇な円卓の騎士が一瞬だけ出現する。
そして、目的の人物を捕まえて元の場所に帰還する……脱走の回数が多くなってきたので、円卓会議で俺のこのボタンによる召喚に応じることが決まったらしい。
現在のスイッチにはランプが取り付けられており、ランプが光っている時は召喚に応じてくれるぞ。
「……今日は『モードレッド』君だったな。一瞬なのに判別が付くようになったよ」
若干十歳で騎士になった優れた少年だ。
初代モードレッドは反逆の騎士だったが、それ以降の『モードレッド』はそうしたこともないらしい。
真面目で才に驕らず、俺にすら優しくしてくれる……ちょっと泣けたよ。
「全く、『騎士王』も俺の所に来るぐらいんだったら、せめて許可ぐらい取ってこいよ」
俺も『騎士王』ぐらい自由人だったら……うん、やっぱり日本人には無理だな。
依頼、どうにかならないかな?
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