虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

スタンガン



 と、いうより普通子供しか無理だろう。
 スキルLvが10以下の者など、生後数年単位の子供に限られる。
 遊べば強化、学べば技能、強くなれば種族スキルが成長する。

 ここに来れるのは、そうした経験を積むことなく育った無垢なる子供。
 ――まさに、箱入りな子供でなければ駄目だった。

「……あれ、おかしいな。なんだか目から液体が溢れてくるや」

 の、はずなのにそこにいる俺って……。
 正式に、子供以下と扱われてしまう俺。

 確かにまだ能力値はMPとDEX以外全部0だが、それでも種族Lvは結構高いんだぞ。
 種族スキルが使えないから関係ないけど、俺でも:DIY:があと1上がればもう入れなくなるんだからな!

「ま、その可能性はかなり低いけど……カンストしたし」

 :DIY:のLvは10でカンスト、これ以上進化することも無かった。
 それなら新しいスキルを手に入れる方が早い……とも思ったが、その様子は全く無い。

 全プレイヤー最弱の俺だからこそ、この場所に入れるのだが、このような場所が何故生まれたのか。
 どうしてこのような制限が掛けられているのか――確かめるしかないよな。

「よし、それじゃあ修羅の道を進むか」

 周囲の気絶した魔物やまを見渡してから、階段に向けて再び歩を進めた。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 二層目に入ったのだが、それでも現れる魔物は全部ベビーシリーズであった。
 ただ、少しだけファンタジー感がある魔物が増えたな。

 一層では犬や猫、ウサギといった地球でも居そうな魔物だったのだが。
 二層では新たに、スライムやゴブリン、コボルトといった魔物が現れたのだ。

「……やることは変わらないけどな」

 人型の魔物にも、スタンガンを当てて気絶させていく。
 か弱い子供を虐待しているようで、今まで以上に心を抉るナニカを感じる。

 手に持ったスタンガンは先程まで使っていたことで、パチパチと電流を迸らせている。
 その音と周囲から漂う焼けた匂いが、どうにもバイオレンスな感じを醸し出していた。

「遠くから撃てば、気も楽になるか?」

 さて、俺の持つ短杖状のスタンガン。
気絶させるスタンガン』という元の名に劣らないように、射撃能力も持たせているのだ。
 DEX(とMP)だけはしっかりと上昇しているので、命中は大体するぞ。

「おっ、鳥型の魔物発見」

 雛鳥なのに空を飛んでいる魔物を見つけ、それに狙いを定める。

「発射ー!」

 ポスッという音と共に、短杖の先から小さなプラズマボールのような物が発射される。
 凄い勢いで鳥へと向かった球は、そのまま見事に命中して――

『ギュピィイイイイイイ!』ジュババババ!

 トラウマになりそうな悲鳴と雷撃音を残して消滅した。

「……うん、もう使わないことにしよう」

 少なくともこのダンジョンでは、と俺は深く心に誓った。


コメント

  • くあ

    倒さなきゃいいのに

    0
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