虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
ドワーフとの交渉
『久しぶりだな、ツクル。入口の方に置いておいたアレ、見てくれたか?』
「はい、バッチリ見ましたよ。今度もう少し新しい物に関する情報を見せますので、できれば再現のコツを教えてほしいですね」
『それぐれぇ、そんな情報が無くても教えてやるさ。それより、これのお蔭でアイツらにも物事を教えやすくなってるぞ。俺としちゃあ、先にそっちへ感謝だな』
一段落着いたのだろう。
俺の姿を見つけた里長が、こちらに向かって歩きながら話しかけてくる。
ちなみに『これ』と言っているのは、里長の腕に嵌められた腕輪のことである。
実はな、ドワーフの里長はとても声が小さく、普段は「――――」のような感じの声量でしか話せないのだ。
ここに最初に来て里長に会い、声が小さいことを知り――俺は拡声の装置を作った。
拡声自体は簡単にできた。
宙に散布した魔力を使い、微弱な電流を発生させる。
それが中に仕込まれたコイルが作用して、振動を起こし――音を拡声するのだ。
細かい部分は魔道具として作ることで簡略化し、マイクとスピーカーを合体させたような腕輪を生み出した。
おまけ機能として、声が腕輪からではなく口から発せられたように見せる機能もあるのだが……そこは、どうでもいいか。
◆ □ ◆ □ ◆
場所を変えて応接室、エルフの里長にも見せた資料(ドワーフ版)を渡し、交渉を行う。
「――と、いった具合です。こちらで採掘できた鉱石を何割か、それでどうでしょ『駄目だな』……え?」
『足りねぇ、っていうわけじゃねぇ。だが、お前の提示した鉱石全て、俺たちで加工できるわけでもねぇんだ。ツクル、お前は鉱石をどうしてぇんだ?』
「……いえ、特に何も考えては」
『明確な目的ってのは、職人に一段も二段も上な結果を齎すもんだ。どういう物を作りたい、それで何をしてぇか……そんな小せぇことだろぉと、職人のテンションは変わるぞ。お前も異端とはいえ職人の端くれだ。そういうことを考えておいた方が良い』
「なるほど」
俺も自分用に適当に何かを作るより、家族のためにと念を籠めた方が良い物ができる。
職人が何かにこだわるということは理解していたが……そういうことだったのか。
「…………では、一つ。机上の空論で終わらせようとしていた夢物語、それを里長に聞いてほしいですね。そして、それを聞いた里長が、その後どうする予定なのか……是非聞かせてください」
『ほぉ、面白いじゃねぇか。いいぜ、聞くだけならタダだしな。言ってみろよ』
そして俺は、自分だけでは成し得なかったことを里長に告げた。
説明を終えた後に、互いに握手を交わしたとだけ記しておこう。
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