虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
ドワーフの隠れ里
ドワーフの隠れ里
それはエルフの隠れ里から少し離れた場所にある、鉱山から伸びた地下道を通ることで辿り着く場所に在った。
初めて行ったのは、エルフの商人が交易に向かったのについていった時だな。
そのときもそのときで色々と驚いたが、俺は今回もドワーフに驚かされることになる。
「……これは、鉄道ですか?」
「おお、坊主じゃねぇか! 久しぶりに来やがった!」
俺の目の前には、蒸気機関車のような物がドーンと置かれている。
下にはしっかりとレールも敷かれており、既に動かせる状態にあるのだろう。
俺のことを坊主といった人こそ、エルフと同じ妖精種のドワーフの一人である。
男のドワーフは少々背が低くて髭が長い種族……など色々と特徴はあるのだが、俺としては声のデカさが他の特徴を掻き消していると思っています。
「まあ、はい。それはそうなんですけど……もう造ったので?」
「里長指示の元、即座に建設が始まったんだぞ! 俺たちの手にかかれば、これぐらい朝飯前だ!」
……教えたのは、不味かったかな?
飲み物を交わして話をしていた際、うっかり蒸気機関車について教えてしまったんだ。
ちょうどサンプルを作っていてな、それをかっぱらって何かをするとは言っていたんだが……もう造ったのか。
話をしていると、どうやら蒸気ではなく特殊な鉱石を使って造られていると分かった。
それにより、星に優しいエコな機関車に昇華されたらしい。
特殊な鉱石……せめて、名前さえ分かれば真似できるんだけどな。
――おっと、話を戻さねば。
「えっと、里長は今どちらに? 少し話をしたいんですけど……」
「里長? またどっかの鍛冶場で何か打ってるんじゃねぇか?」
「やっぱりそうですか。では、自分で巡って探してみますよ」
「おう! 気を付けてな!」
死亡レーダーを起動して、一番強い反応を放つ場所に向かっていく。
◆ □ ◆ □ ◆
里長はあのドワーフの予想通り、鍛冶場の中で鍛錬をしていた。
燃え滾る紅の炎もなんのその――炎の傍で何度も鉱石を叩き、加工を行っている。
この状態になっている里長は、どれだけ話しかけようとも一切反応をしない。
いわゆるゾーン状態に入っており、声のような雑音は全てシャットアウト中なのだ。
キーン! という音が上がる。
発生源はやはり里長で、澄み渡るような音に里長から離れた場所にいたドワーフたちも感嘆の声を上げた。
「……俺も、いつかこんな風に鍛冶をしてみたいな」
かつてショウ用に剣を打ったことがあるけど、アレは:DIY:に全てを委ねた結果だ。
そうではなく、俺自身の力で剣を打ちあげてみたいと思う。
今はただ、里長が打つ姿に見惚れることしかできなかった。
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