虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
貢献イベント その26
「……アア。ワレ、カノチ、キカンセリ」
帰り道にトラブルを起こしたものの、どうにか乗り越え……スタート地点に戻ってこられた。
少々疲労からか、片言しか話せなくなっているが、それでもしっかりとした足取りでこの場所まで来たのだ。
少し休憩し、言語機能を取り戻してから移動を再開する。
「えっと、残り時間は……一時間か。かなりギリギリだったな。やっぱり、引き受けない方が良かったのか?」
《いえ、新たな技術を確立させられました。そのことだけでも、価値があったかと》
魔物たちとの大規模レイドで終わりかと思いきや、まさかあんなイベントまで用意しているとは……ここの運営、本当に何がしたいのだろうか。
その結果生まれた交流により、俺の技術はさらに向上した、と思われる。
よくは分からないが、『SEBAS』がそう言っているのだし、まあそうなんだろう。
「そっか。なら、そうだと思っておこう。座標の方は?」
《移動は可能ですが、実際にどれだけのエネルギーを消費するかが分かっておりません。アドベンチャーワールド全てを把握したとしても、この世界はまた異なる世界。また理全てを把握するための時間が必要です》
「……ま、可能性が0じゃなきゃ問題ない」
二度と会えないというのは、少し寂しいからな。
どれだけ時間が掛かろうとも、いつか会えることを願いたいよ。
……結構、外交場所としてもお世話になりたい所だし。
◆ □ ◆ □ ◆
村の中で時間を潰していると、やはり噂が流れてくる。
一番多かったのは、村の方に襲って来た魔物イベントに関することだろうか。
別サーバーに現れた大量の魔物は、俺の予想通り家族によって大体が殲滅されたとのことだ。
剣で飛ばされ、鞭で払われ、杖によって弱体化していき――俺のように死に物狂いで戦うのではなく、クール且つスマートに勝利を飾ったらしい。
サーバーは別々のはずなのに、どこでも無双する我が家の最強たち……俺? 文字通り死に物狂いでしたよ。
そちらの方でも現れた人型の奴は、自分を侵略者と名乗ってプレイヤーたちへと勝負を挑んだそうだ。
初めの内はプレイヤーも苦戦していたそうだが、全ての魔物を掃討した家族の皆によって、最後はこの場所から追い出された。
――そう、追い出されたらしいのだ。
みんなでも勝利することはできず、体を一部破損させるのが精一杯。
チートなアイツらから逃れるとは、侵略者やはり恐ろしい存在だった。
俺、ちゃんと交渉に留めて正解だったよ。
「……お、もう終わりの時間か」
インフォメーションが鳴り響き、イベントが終わったことを告げている。
放送が終わると魔方陣が現れ、俺たちを元居た場所に戻すそうだ。
「それじゃあ、お疲れ様でした」
誰に言うでも無くそう呟いた声は、転送音に掻き消されて誰にも届くことは無かった。
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