虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
貢献イベント その23
ツクルは、複数の加護を授かっている。
プレイヤーの中にも、ツクル以上の数の加護を持つ者はいるのでそう珍しくはない。
……だが、その加護を与えた存在が、かなり貴重であった。
「ツクル君のバトルモード! いつもの手抜きとは違って、エキサイティングだねー」
「……ツクルめ。仕事が増えることを」
「良いじゃないかい。最近は信仰も増えてきているんだろう? 死に戻りって概念そのものが、君に関係あるんだからさ」
「それとこれとは別であろう。アヤツの刃は因果改変の力。使えば使う程、本人にその対価が求められるものではないか」
「――本来は、だけどね」
空中に投影された映像内でツクルは、八本の『死神の短剣』を器用に動かし、目の前を遮る魔物を切り裂き続けていた。
抗おうともツクルは貧弱、止めようとすれば死の爆弾が解き放たれる。
触れた魔物は全て即死、それが今までの結果であった。
エルフの森とは違うどこか、何もない空間で、その存在たちはツクルの戦いを覗く。
どちらにもノイズのような靄が掛かり、その正体を見ることはできない。
だが、その存在感が彼らがどういった存在であるかどうかを体に教えてくれる。
――『神』、それが彼らであると。
彼らは創造神と死神。
かつてツクルに祝福を与えた二柱だ。
「僕と君の加護が働けば、そんな小さなことは気にならない。そうだよね?」
「だからこそ、気を配るべきなのだ。さすがに他の者を抑え辛くなっている。現に精霊神も接触しているだろう」
「あー、あのロリババアね。自分の領域にツクル君が来たからって、まさか精霊魔法を授けようとするなんて、誰が予想できるのさ」
「アヤツの虚弱さ故に防げたものの、いつ面倒な奴らが介入しようとするか……」
「他のプレイヤーにも面白い子は沢山いるけど、ツクル君は輪を掛けて愉快だからね~。みんながみんな、ツクル君で遊ぼうとするのは……ちょっと邪魔かな?」
そう言った創造神からは、笑みが失われていた。
「まあその内、そっちに関しては手を付けるとして……今回のイベント、どうしてエルフの森にも侵攻しているの?」
「確かに、ツクル一人では条件を満たすことは無かったはず」
ツクルは自身が居るからこそ、エルフの里に魔物が攻め入ったと思ったが……それは間違いであった。
本来の条件は、各種族の居住エリアに一度でも入ったプレイヤーのスキルLvの合計値が、最低でも100を超えることであった。
「ツクル君はこのイベント中、ドワーフの所にも行っていたはず。だけど実際に魔物の侵攻がされたのは、ツクル君の居るエルフの場所だけ……うん、おかしいね」
「……仕方がない、探すか」
死神はどこからか巨大な鎌を取り出し――何もない場所を切り裂く。
すると、そこに裂け目が現れる。
マーブル色の空間がその場に広がり、死神はそこに足を踏み入れた。
「私は先に行って探しておく。お前も周りを抑えてからこっちに来い」
「え~、ツクル君はー?」
「……録画しておけ。私もあとで観る」
「了解! ――それじゃあ頼んだよ」
創造神と死神、二人がこの場から消える。
そこに残されたのは、今まで空気と同化していた一柱の少女だけであった。
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