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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

貢献イベント その20



「……これは、事実のようだね」

「おいおい兄者、さすがに不味いんじゃねぇのか?」

 目の前では、里長兄弟が深刻そうに映像を眺めて話し合っている。

 魔物の大群を映像として撮っておき、報告しただけだ。
 ただ弱い魔物が徒党を組んでいたわけではなく、強い魔物がより強い魔物によって統率され、エルフの隠れ里に侵攻しているのだ。

「えっと……私の調べでは、狙われたのはここだけでなく、人族の村もです。私の同族がたくさんいますので、恐らくそちらは問題なく対処されると思います」

「そうかい。そちらの方々をこちらに呼ぶことは……残念だが無理のようだ」

「そうだな。人族の村まで行く時間も足りないし、何よりこの魔物を倒すだけの力を持つ者はそういないだろう」

「一応要請だけはしておくが、そうした者がこちらに来るのは村の方に来る魔物を倒し終えた後になるだろう。こちらはこちらで対処する必要があるな」

 うん、確かにうちの家族やその仲間なら確実に倒せるだろうな。

 剣を振れば軍勢が薙ぎ払われ、鞭を振るえば軍団が吹き飛び、杖を振るえば軍隊が鼓舞される。
 勇猛無比に戦い、万夫不当を操り、一騎当千を生み出すその力たち――いやー、どうして俺だけ外されてるんだろうな。

 しかし、みんなには村を守ってほしい。
 プレイヤーにどれだけ強い奴がいるか、俺が把握していない現状で、プレイヤーを信用することはできない。
 絶対に信頼できる者に、村の方の守護を任せておきたいのだ。

 ……ま、サーバーが違うからそもそも関係無いけどな。
 あくまで居たら、の話だ。
 それより、確認しておかなければならないことが――。

「お二人は、全力で・・・戦えるので?」

「……俺たちの力は、世界樹によって本当に必要な時にしか使えないようにされている。おまけに解除にも面倒臭い手間がいるから、全力は無理だ」

「もちろん、出せる限りの力は出す。だが、僕たちだけでは恐らく、全てを守り切ることは不可能だろう」

「……そう、ですか」

 二人の力の一端は、この滞在中に知ったのだが……封印された状態でも凄かったんだけどな。
 それでも、全力でなければ勝てないと彼らは言う。

 なら、全力の『超越者』がいれば勝てるのかもしれない。

「……君が、そこまでする必要は無い」

「お前が何を考えているかは分かる。どうせ自分一人で行く気なんだろう?」

「…………はい、幸い私の能力は継戦能力が高い物です。私一人が向かえば、恐らく勝利できるでしょう」

 コンテニュー死に戻りしてでもクリア殲滅する。
 俺が折れなければ、恐らく勝てるだろう。

「ここは説得するのが一番なんだが……」

「『超越者』は折れねぇからな。どうせ何を言ったとしても、自分が決めたことを成そうとするだけだ」

「よくご存じで」

「それはもちろん」
「俺らも同じだからな」

 魔物は今も里へと近付いている。
 何もしなければ、魔物は里の中を破壊していくだろう。
 被害も出るし、死者も出る。

 ――それだけは、防がねばならない。

 無言で立ち去る俺を、里長兄弟は何も言わずに見逃す。

「もう、覚悟は決めた。無謀だろうが蛮勇だろうがやってやる。……さぁ、レベリングの始まりだな」

 そっと扉を閉め、俺は先程までいた森へと向かっていく。


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