虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

貢献イベント その17



 さて、内容の確認を――。

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クエスト:『里長からの頼み事』

指定された場所へ物を届けろ

基本報酬:エルフの隠れ里でのクエスト受注権限

      受注しますか?

    〔YES〕/〔NO〕

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「君には、この手紙を隣りの木に住んでいる私の弟『イルムスィドラ』に渡してもらう」

「えっと、接触はすぐにできますか?」

「ああ、私の名前を言えばすぐさ」

 ちなみに、里長は『アルフェドティーン』という名前だ。
 兄弟揃ってカッコイイ名前だな。

 ここに来る途中で聞いたのだが、エルフの名前には必ず小文字が入るらしい。
 道案内をしたあの男の名前も、『スリャングス』と言うみたいだしな。

「――分かりました。この手紙、しっかりと届けさせていただきます」

「では、よろしく頼むよ」

 迷わずに〔YES〕を選択し、俺は早速この場所を飛び出した。



「――ほお、兄者からの手紙か。確かに受け取ったぞ、客人よ」

 さて、枝を経由して隣の木に移動した後、警備をしていたエルフに手紙の旨を伝えて弟さんに会っていた……稽古場で。

 なんでも弟さん、戦闘好きらしくてさ。
 エルフの戦士長的なポジションに就き、警備の者を扱いているようだ。
 少しその様子を見たのだが……口角が吊り上がってましたよ。

「それで、客人は闘えるのか?」

「あ、いえ。それはからっきしで。私は戦闘よりも生産が向いていまして」

「……お前ら、少し二人にさせろ」

 静か、それでいて重い声を出して、弟さんは他のエルフを稽古場から追い出す。
 そして、俺たちは二人っきりとなる。

「――お前、『超越者』だろ」

「え、いや、その……」

 いきなり見抜かれました。
 何度もバレているけど、そんなに簡単に分かることなんだろうか。

「俺が闘えると思ったのは、その気配を感じたからだ。大人しく誤魔化すのは止めろ。兄者も、その辺は既に気付いているだろう」

「……ハァ。ですが、戦闘ができないのは事実ですよ。虚弱ですから」

 なるほど、道理で里長が俺を魔力で何度も殺していたわけだ。
 きっと、じっくり調べていたんだろうな。

 ま、死ぬ度に情報がリセットされるだろうから、なんにも分かってないと思うが。

「そうか。折角『超越者』同士、激しい死合でもしようと思ったんだがな」

「……いえ、そうすると一方的な処刑になりますのでご勘弁を」

 うん、レーダーがヤバいと告げている。
『超越者』用の対策を幾つか持ってはいるものの、やっても得の無いことはできるだけ避けておきたい。

「ま、仕方ないか。兄者に伝えてくれ――すぐに動くってな」

「あ、はい。しっかり伝えておきます」

 そうして、俺は里長の場所に戻る。
 ……一体、何が書かれていたんだろうな。


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