虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
貢献イベント その14
しばらくすると、男は立ち上がる……こともせずに地面に五体投地を行う。
まあ、つまり土下座だな。
「頼む! オレのことはどうしてくれても構わない! だから……だからフリュを目覚めさせてくれよ!!」
……ヤバい、色々とヤバい。
なんか決意をした決死の行動みたいじゃないか、これ。
睡眠薬なんて、放置すれば勝手に目が覚めるなんて言えないじゃないか。
まあでも、これで話し合いに進めるか。
「そう、ですか。分かりました、では少々失礼しますね」
そう言ってフリュと呼ばれた鳥に近付き、再び丸薬を口内に入れる。
すると、死んだように眠っていた鳥はゆっくりと目を開き――。
『……キェッ?』
「フリュ、フリュ!」
『キィエ!? キ、キキキィイエ!!』
ああ良かった、などと言って鳥にガシッと抱き着く男。
これが女だったら、エルフスキーはさぞ興奮するんだろうな。
中性的な容姿、優れた相貌を有するエルフだが、さすがに性別は間違えないよ。
コイツ、見た目年齢がもう高校生ぐらいだし、喉仏があるのが見えるし……うん、これで女だったらそれはそれでビックリだな。
「えっと、そろそろいいですか?」
『キェ?』
「……ああ、そうだったな。オレはな、これからコイツの言うことを聞かなきゃならなくなったんだよ」
『キーキキィエ?』
「いい、これはオレの決めたことだ。フリュはみんなの所に帰っていてくれ」
『キェ!? キキキエ!』
「……大丈夫さ。いつかまた会えるさ」
俺、彼の頭の中ではとんでもない極悪人として扱われているな。
何? 俺はコイツを奴隷として売り捌けばいいのか?
別に隷属の首輪はサンプルとして作ってあるけど、奴隷なんて家族にどんな目で見られるか分からないから要らないぞ。
「えっと、酷い目に合わせる予定は無いですので、とりあえず鳥さんも一緒にどうぞ」
『キェエ♪』
「分かった。だけど、絶対にフリュには手を出すなよ」
「えぇ、理解してますよ。ですが、私が要求するのは――――だけなんです」
「…………本当に、それだけか?」
「はい、それだけですよ」
俺の頼み事を告げると――男は暫く悩んだ後に、肯定の意を示した。
◆ □ ◆ □ ◆
そして今、俺たちは山の中を歩いていた。
「そういえば、貴方たちはどうしてあそこにいたのですか?」
「あそこの水は美味いからな。フリュと一緒に汲みに来る予定だったんだ」
「ああ、それで水筒に」
鳥の上に乗って移動している男の腰には、見た目以上に水が入った水筒がぶら下がっている。
結構な量の水が入っていたな。
俺もやっているが、空間圧縮とか空間拡張とかの技術が使われているのだろう。
「そうですか、帰りに汲んでいくことにしましょうか」
「一気に飲み過ぎるのは危険らしい、そこだけは気を付けておくといいぞ」
「はい、ありがとうございます」
そうして会話をしていると……男が足を止めた。
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