虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
貢献イベント その13
「ば、化け物め……どうして死なない」
「全く、失礼な人ですね。出会ったばかりの人に化け物と告げるなんて……親の顔が見てみたいものですよ」
「全身に矢を刺しても死なない者を、普通は化け物と呼ぶのだ。少なくとも、妖精族の中ではそれが常識のはずだぞ」
「なるほど、異文化故の相違でしたか。それでは仕方有りませんね。私としては、その違いとやら、貴方と話をして確かめたいのですが――」
「なら……なら死んで薬を寄越せ!」
いやいや、死んだら薬は神殿に輸送されるからな。
俺を殺してドロップアイテムが落ちるというなら、この辺りはドロップアイテムの宝庫になっていたさ。
エルフの男によってハリネズミ状態になったりしたが、少しずつ相手は冷静になってくれている。
薬を渡したら、問答無用で俺を殺す選択を取るだろう。
ならせめて、身の安全を約束させるまでは粘ってみようか。
◆ □ ◆ □ ◆
そうして死に続けること数十分。
ついに矢が切らしたエルフの男は、一旦動きを止める。
「……おや? もう攻撃は終わりですか? では、そろそろこちらの話を――」
「まだだ! まだやれる! 風の精霊よ、アイツを切り裂け!!」
首元に涼しい風が来たと思ったら、急に視界が暗転して――元に戻る。
うわ、鎌鼬っていうかウインドカッターというか……まあ、風系の刃が来たよ。
というか、やっぱりエルフと言えば精霊だよな。
レーダーが突然彼の背後に何かが出現したことを確認した瞬間、風の刃は飛んで来た。
つまり、命令をしてから精霊は攻撃するのだろう。
それまでは俺に害を与えることも世界に干渉することもないから、俺のレーダーに反応することがなかった。
精霊、結構危険な相手になりそうだな。
「やっぱり駄目か……でも。風の精霊よ、アイツを細切れになるまで切り刻め!」
そう精霊とやらに命令すると、レーダーが先程以上に警鐘を鳴らす。
が、分かっていてもそれを躱すことはできず、俺の体は細切れにされていく。
「ふむ、初体験でしたよ。細切れにされるのは。体は斬られたはずなのに、何故か神経が繋がっているような感覚に包まれました。あまりに切り口が滑らかですね。これが、風の精霊の素晴らしさですか?」
「……そ、そんな馬鹿な」
顔色を土気色にした男は、地面に膝を着いてショックを受けている。
確か、顔色が悪くなるのは魔力が枯渇しかかっている時だっけ?
つまり、精霊に何かを頼む時は魔力をそれに応じた分だけ支払うのだろう。
……俺、素の分だと全然頼めないな。
そんなことを思いながら、男が立ち上がるのを待ち続けた。
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