虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

貢献イベント その10



「……出遅れてるって、不利だよな」

 NPCが何か困っていて、プレイヤーがクエストを受注するってこと、あるだろう?
 まあ、MMOでもRPGだとよくあるシステムだろう。

 だが、これはVRMMOだ。
 現実で、同じような悩みを何度も何度も抱え込む人など中々存在しない。

 何が言いたいかというと、既に村に悩み事など存在しないというわけだ。

 誰かが困っていると、即座にプレイヤーが動いて解決していく。
 そのため、村では一種の争いが繰り広げられている――。

『あ、あの。誰k――』

「はいはい、どうしたんです「どけっ! 依頼を聞かせて貰おう「ウインドバレット! あの、クエストを「死ね!」」」」

『……いえ、なんでもありません』

「んだよ、NPCは黙ってポイントだけ寄越せばいいんだよ」「チッ、てめぇらが割り込むからこうなるんじゃねぇか」「どうしてくれるんですか! 僕のクエストが」「ああ、もう黙れよ!」

 ……さ、殺伐としてるな。
 プレイヤーたちはクエストに飢えており、自分たちでそのチャンスを無為にしている、なんてこともあるみたいだな。

 いやな、それでもそういう輩ばかりでないことも解ってはいるんだよ。
 この後他のプレイヤーがさっきの奴らを全員PvPで全員しばいて、一度死に戻りさせていたからな(どうやら粛清のようなシステムがあるみたいだ。さっきの奴らは嫌がっていたのだが、何故かPvPが行われていた)。

 このサーバーにプレイヤーのリーダー的存在が居るか居ないか……それが、この状態が生まれたかどうかに関わっているのかもしれない。
 集めた情報によると、有名なプレイヤーが居る場所では、このような事件が起こることはほぼ無いらしい。
 なんでも、始めの頃はそうした事件もあったらしいのだが、そのプレイヤーやそのプレイヤーを応援する者が騒ぎを起こす者を粛清していき……いつの間にかそうした事件が起こることが無くなったらしい。

 ――うん、カリスマってのは凄いよな。

「はてさて、このままだとポイントを手に入れることは不可能そうだなー。ギルドも無いこの村で、こんな殺伐とした環境で……サーバー変えも不可能。どうしたものか」

 ちなみにだが、ギルドも存在しない。
 あくまで知られているのは村人からのクエストのみであり、それ以外の情報は俺の元に届いていなかった。
 魔物を狩ることでポイントを手に入れることは可能だが、それでも悪鬼羅刹プレイヤーが蔓延る場所に行くのは避けたい。

 ……何か、何か策は無いのかな?
 この空間を調査しながら、それを熟考していった。


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