虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
貢献イベント その04
『しかし、それはあくまでかつての名。今の我はただの血気盛んな魔物だ。勇者の封印を破った今では、『超越者』以外に我を倒せる者はいないだろう。……さあ『聖者』よ、我にその実力を魅せてくれ!』
「…………」
イピリア、その名が俺の頭から離れない。
それは、地球においてアボリジニが崇拝していた精霊のことであった。
髪と髭を持った虹色のヤモリ。
一年に一度大雨を降らし、雨季を告げて大地へと豊穣を齎す。
鳴き声は雷鳴とされ、生息地は立ち入りを禁忌とする神聖な聖域とすら考えられた。
一部が異なっているとはいえ、確かに目の前の魔物は自身をイピリアと名乗っている。
それはつまり、そんな伝承を残す精霊を相手にしなければいけないということだ。
(……いや、ただの巨大ヤモリだったなら毒でも使えば勝てた。だけど、精霊だから通じるかどうか分からないんだよなー)
大体、精霊に毒を使ったっていう伝承を聞いたことがないぞ。
毒をセコイ、なんて言って暴れられても困るし……今回は控えておくか。
「えっと、闘い……ですか?」
『しかり。我に絡みつく瘴気は、強者の血に飢えている。我はその衝動を抑えられなくてな、すまないが殺らせてくれ』
「…………ハァ、分かりました」
俺も覚悟を決めた。
今まで着ていた作業服を脱ぎ、作っておいた白装束を身に纏う。
……ほら、もう儀式みたいなもんだろう?
「準備、できました」
『……何らかの力が宿っているな。面白い、どういったものか試させてもらおう』
黒いイピリアは瘴気を一気に解放して、俺の元へと一瞬で向かって来る。
――そして、俺の首に噛み千切った。
◆ □ ◆ □ ◆
(……おかしい、確かに首を千切ったはず。実際、今も首は口の中ですり潰されている)
ソレは、確かにツクルを殺した……だが、妙な不安感に苛まれていた。
ツクルは死んだ、それは自身の口内にある首が物語っている。
そのはずなのだが、いつまで経っても勝ったという感覚が訪れない。
(……ッ! やはり、まだであったか!)
「――いやー、一撃でしたね。ですが、コンテニューいたしましたので、もう一d――」
(……やはり、駄目か)
殺したはずの男は、淡い光と共に元いた場所に現れる。
再度攻撃を行うが、結果は同じであった。
「まさか、セリフの最中に攻撃されるとは。それはちょっと、どうかと思うのですが」
「……何故だ、何故死なない」
「それを答えては、私は貴方に殺されてしまいます。まあ、『生者』らしい能力とでも、言っておきましょうか」
(『聖者』らしい……だと。ならば、肉体に無限の再生力を? いや、勇者と共に居た聖女も、それは不可能だった。聖属性を極めた者が不可能なそれは、いかに『聖者』といえども何度もできるはずがない。……どれ、虱潰しに試してみるか)
ソレはツクルの能力を暴くため、あらゆる方法を試すことにした。
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