虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
生産状況
「『SEBAS』、例の物はできそうか?」
《……申し訳ありません。どれも旦那様のお体を酷使する仕様でしかできておりません》
「あ、もうそれなら使えるんだな」
《既に同意を得て森の魔物たちで試験的に使用してみましたが、結果は好ましいものではありませんでした。旦那様がより多いデータの収集をなさっていただければ、精度の高い物が完成するのですが……》
「うん、それだと本末転倒だな」
危険を避けるために危険に挑む。
そんな矛盾した行動をして、一体何になるのだろうか。
ま、危険度を比べればそうした方が良いという時もあるのだが……少なくとも、この問題では否と答えられよう。
「なら……『コード:ロマンティック』のはどうだ?」
《順調、と思われます。あくまで今までに集めた技術をコンパクトにするだけですので、少しずつではありますが、旦那様のご要望通りの品が出来上がるかと》
「おお! そりゃあ良いな!」
《既に魔方陣を保存する石は作成済み、勾玉型に加工してあります》
「うんうん。魔術じゃないのが少し残念なんだが、それでも同じようなことができるならまあ良いとしよう」
《これで、他の者でもある程度ならば魔法が使えるようになります。自主的にこの星の管理を手伝ってもらえれば、私の作業効率を向上させることも可能です》
まあ、勾玉型に細工しなければもっと早くできた気もするがな。
それを使い、この星に使われている装置の運用エネルギーを注いでもらう。
そうすれば『SEBAS』の作業効率は上がり、魔物たちはお礼の品を貰える……うんうん、まさに互いに利益のある旨い話だな。
「勾玉はできたか。なら、日常系はどうなっている?」
《サングラスや傘、後は電燈ですか。魔法が一部使われていますが完成済みです》
「……うん、何故それを挙げたかは分からないが別にいいや。どれくらいの性能が見込めるんだ?」
《サングラスならば視界良好、幻覚無効などが付きます。傘には環境適応、遠距離攻撃機能が。電燈には隠蔽無効ですね。電燈をお売りになるだけで、暗殺者が活動し辛い世の中になります》
「うちのヤツがどんな風に楽しんでいくか分からないから却下。誰かが急に隠蔽を使いたいと思った時に、俺の電燈がそれを邪魔するわけにはいかない」
特に、ショウは巻き込まれやすい体質だ。
隠蔽を使わなければいけないような状態に陥る可能性も高いし、それが俺の作った物という事態になるのも嫌だ。
「販売は基本、ポーションだけだな。なんとなくで売ったポーションですらあんな事態になったんだ。それより便利な品を売ったらどうなるか……うん、止めておこう」
大戦を起こされても困るしな。
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