虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
神壇
『――祭壇だが、特別なスキルが造るのに必要となるのだ』
問い質すと、最初に風兎はそう言った。
……いやまあ、地球ならともかく、ファンタジーな設定があるこのゲームなら、そういうこともあるのだろう。
何せ、祭壇には精霊や神を崇める儀式場としての使い方もあるんだからな。
『だからこそ、お前がどんな大きさであれ、祭壇を造ることは不可能だと思っていた』
「……こんなのでも、良いのか? もっと巨大なヤツじゃないと効果が無いとか……そういうのは?」
『儀式に必要なのは祭壇の大きさでは無い、捧げるものと祭壇に秘められた力だけだ』
「秘められた力?」
前者は分かるぞ、腐った林檎と新鮮な林檎じゃ違いもあるだろうし、ピチピチな生娘とよぼよぼの老婆を捧げるんじゃ神のモチベーションとやらも変わるだろう。
だが、祭壇に秘められた力? あまり日本じゃ聞かない言葉だな。
『お前の造ったそれは、もう祭壇などというちんけな代物では無い。神壇とも呼べるものになっている』
「……よく分からないけど、つまり風兎はこれを気に入ってくれたのか?」
祭壇だろうが神壇だろうがどうでもいいけど、そこだけは訊いておかないとな。
元々風兎のために作った物だし、駄目なら一から作り直さないと。
『無論だ。ただ……あまりに力が強くてな、少々心配なのだ』
「……ん? 良く分からないが、力とやらを弱くした方が良いのか?」
『いや、それは別に構わん。お前たちのような者で例えると、そうだな……貧民街の路上で寝る毎日だったのが、ある日突然王城に住めと言われるようなものだ』
「…………やっぱり、交換する?」
つまり、いつも段ボールで寝ていたホームレスが、突然スイートルームを貸し切ったみたいなことだろうか?
俺だったら、その緊張で心臓が止まってしまうかもな。
『問題ない。若干、この祭壇で制約を誓うのに時間が掛かるというだけだ。お前は私のために精一杯頑張っただけであり、……そ、そのだな、あの……か、感謝する』
「風兎……」
『な、なんだその目は。か、勘違いするでないぞ、私はただ、祭壇の出来を褒めただけだあって、その、お前を褒めているわけでは無いのだぞ!』
「うん。あ、はい」
森に居た頃から思うんだが、風兎はツンデレ属性でもあるんだろうか。
性別は無いらしいからそのツンデレに需要があるかどうかはさておき、それでも俺や森の魔物たちの癒しになっていたことに間違いはないだろう。
『……しばらくの間は制約を行うために一人になりたい。すまないが、お前はこの場から離れてくれないか?』
「ああ、分かった。何か困ったことがあったらすぐに言ってくれよ」
『当然だ』
風兎がこの後何かをするらしいので、俺は『SEBAS』の元へ向かって別のことを行い始めた。
……全然、普通の物作りじゃなかったな。
できたのは、家に飾るような神棚だと思っていたんだけど。
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