虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
祭壇作り
「よし、久しぶりに普通に何か作ろうか」
このゲームで俺は色々な物を作ってきたせいか、なんだか求める質が上がり過ぎて、調子が上がらなくなってきた。
なので今日は、現実でも作れるような物を作っていく日にしようと思う。
「しかし、一体何を作れば――」
『では、森の者たちと一緒に、住処を作るのはどうだ?』
「……風兎、それは普通の物作りとは言わないだろう」
そうして云々と考えていると、風兎がそう提案してきた。
あれから少しの時間が経ち、今では風兎が俺のことを『お前』と呼ぶようになっているぞ(やったね、ランクアップだ)。
だがな、風兎。
住処ってのは、そう易々と作れるものじゃないだろうに。
鳥の巣箱ぐらいならともかく、熊や猿が住む場所となると……。
「というか、今まではどうしてたんだ?」
『木の上や洞穴に居たな』
「うーん、そうなると洞のある木でも育てるのがベストか? まあ、そっちはおいおい育てておくとしよう」
『そうか、助かる』
俺としても、新たな住民に住む場所がないというのは問題だ。
本来なら、:DIY:を使って各魔物ごとに住み心地の良い場所でも造ろうと思うが……共同作業をさせるってのも、いい考えかもな。
さて、それじゃあそのことを踏まえ、今日作る物を風兎と考えてみよう。
「うーん……そうだなー、兎小屋……はないな、すみません」
『なんとなくだが、私を馬鹿にしていた気がしたぞ。一体どんなものなのだ、それは』
「未来溢れる若き子供たちが、素晴らしき生命の大切さを知るため、崇高な兎を可愛がるための空間だ」
『……何故だろうか、何か情報が足りないだけで仰々しく感じるその説明は』
うん、子供が世話を忘れてそのまま死んでいたり、むしろ子供からの虐待があるってことは内緒にしておこう。
「まあ、今日は風兎を祀る、簡単な祭壇でも作ることにするか」
『何、祭壇だとっ!?』
物凄く驚いた、みたいなリアクションだ。
あ、もしかして不味い感じか?
「えーっと、嫌なら止めておくぞ。木で作る簡単な物の予定だったし」
『いや、本来聖獣様ぐらい格が無ければ造ってもらえぬ代物でな。それをお前が造れることに、かなり驚いていたのだ』
「……何か、特別な儀式でも要るのか?」
『いや、特にそういったことは無いが……作れば分かることだ』
「へぇ、まあならやってみるか」
:DIY:を起動して、いつものようにトンテンカンと木を叩いていく。
……ほら、木組みも:DIY:ならある程度、簡単にできるからさ。
建築士の皆様、大変申し訳ありません。
◆ □ ◆ □ ◆
風兎と会話をしながら、頭に思い浮かべた祭壇を組み立てていく。
感覚的にはなんだか、パズルゲームみたいになっているんだよなー。
組み立てるやり方が勝手に脳裏に過ぎるから、妙に簡単に思えてしまう。
「――よし、これで完成だ。……って風兎、どうしたんだ? そんな『あ、ありえない。どうしてできるんだ!?』みたいな百面相なんてして……」
『……読心のスキルでも持っているのか。ほぼ当たりだぞ』
「そんな顔をされたら大体分かる。そんなことより、祭壇を作る条件をちゃんと言え」
出来上がった仏壇サイズの祭壇を見て、風兎はまさにそんな感じの表情を見せていた。
ここまで驚かれると、こちらもこちらで気になってしまう。
全く、今度は何なんだよ。
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