虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

禊の結果



「はいはーい、順番に並べよー。ちゃんと人数(?)分はあるからさー。ほらそこっ、横入りするんじゃない!」

『ウキキッ!?』

『『キキキィ!』』

「罰として、バナナを一房減らす。これは連帯責任だからな」

『『『キキィッ!?』』』

 あれから暫くして、未だに罪の禊は終わらずに森の中に居た。
 あ、これがクエストの内容だ――

===============================
クエスト:『功罪の献身:風兎』

罪を禊げ、罪を贖え、森の者へ貢献せよ

基本報酬:称号『罪過の免罪符:風兎』

  このクエストは強制受注となります

===============================

 ウサギの種族名が風兎であったとか、結局強制クエストじゃないかというツッコミを仕方なく呑み込み、今は餌付……ゴホンッ、食べ物によって貢献をしているのだ。

「ほらほら、このフォレストエイブたちの二の舞を踏みたくない奴は、しっかり並べよ」

『――――!』

 こうして一日に一度、アイプスル産の食べ物を持ち込んで配っている。
 品質にはこだわっているので、味に関してクレームが来ることはなかった。

『……相変わらずのようだな』

「おお、風兎か。人参食べるか?」

『いらん、と言いたいところだが、逆らえないのが癪に障るな』

 しばらくすると、風兎がやってくる。
 彼の守護獣もまた、アイプスル産の人参にできたファンなのである

「うちの人参は新鮮だからな、風兎も気に入ると思っていたさ」

『クッ、悔しい。でも感じてしまう!』

 変なことを言う風兎はスルーしておくとして、魔物たちに食べ物を配っていく。
『SEBAS』による最適な環境での栽培が行われた植物の数々は、肉食系の魔物に草食系の概念を叩き込む程の美味さであった。

 余談だが、このクエストをかなりの間やっている間に気付いたことがある。

 ――魔物の食事についてだ。
 どうやら魔物は、魔力や魔素と呼ばれる成分を摂取できれば食べ物はなんでも良かったらしい。
 それ故に、狼がキャベツを食べても満足げな顔をしており、守護獣と呼ばれる風兎も文句一つせず、人参をモキュモキュと食べているのだ。

「おーい、風兎。確か今日でクエストも終わりだったよな?」

『『『――ッ!?』』』

『そうであったな。確かに光の球の数だけ、森の者に食べ物を献上した。条件は満たしているようだ』

『『『――ッ!?』』』

「……お前ら、俺に餌付けされ過ぎだろ」

『本当に困ったものだ。貴様がクエストを受けてからというもの、森の者たちの生活は激変した。ある者は農業に励むようになり、またある者は言語を磨くようになった……『おかわり』と言うためだけにな』

『おぁわり!』

「はいはい。ほら、しっかり食えよ」

『あぃ!』

 いつまでも話せないなら、作っておいた翻訳機でも使おうと思っていたんだが……魔物たちは自分で話せるようにしていたようだ。
 風兎によると、魔物たちの習得スキルに(農耕)や(人族言語)、(料理)や(解析)などが新たに追加されたようだ……後半は、よく頑張ったと思うよ。

 しかし、クエストも今日でお仕舞い。
 予定では、晴れて自由の身になるはずだったんだが……どうしようか?


「虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く