虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

強制転位



「……ハァ、結局こうなったか」

 そして、俺の体は再構成されて結晶の前に出現する。
 魔法かスキルで無理矢理連れていこうとしたんだろうけど、それに俺の体が耐えられるわけないだろう。
 俺の死に戻り対策は街でしか機能しない。
 なので、『アイプスル』以外の場所に行こうとすればあっさりと死ぬのだ。

「全く、強制イベントにも思うことだが、自分のこの状態にも嫌気が差すな」

 これがルリならば、行った先で幸運な展開に恵まれるのだろう。
 これがショウならば、少年漫画のような熱いバトルかキャッキャウフフなイベントに遭うのだろう。
 これがマイならば、行った先で起きることに冷静に対処していただろう。

 だが、俺はそんなイベントが起きることもない。
 きっと、俺のこのゲームでの運は全て消費されているんだろう。
 最初に要求を受け入れてもらえた瞬間、そこが限界だったんだな。

「……ま、楽しいから好いんだけどな」

 色々とグチグチと言ってはいるが、対策を考えているのも面白いと思えるしな。
 それに彼らが求めている『超越者』の理想像に、俺は届いていないだろうし。

「というか、どうしてあの神様は『超越者』にしたんだろうな」

 いや、一応何度か確認したんだよ。
 だが、一度も本気で答えてくれなかった。
 ……大体適当にはぐらかすんだよ。



「…………うん、とりあえずまた来ると嫌だし……逃げるか」

「――させると思うか?」

「で、ですよね~」

 悩んでいても仕方ないし、一度『アイプスル』に身を隠そうか……と思った矢先、あの二人組が出現した。

「それがお主の『超越者』としての力なのかの? ……まあ、何でもありなのが『超越者』という者じゃしな」

「え、えっと……まあ、その……はい」

「逃げようとしても無駄だ。既にお前は、異層結界で遮断してある」

「逃げる気は、無いんですけどね」

 異層結界? 言葉通りの物ならば、死に戻りをしても神様のクエストを受けた時のような状態になるのだろう。
 本来の使い方としては、転移禁止とか絶対防御が正解だろう。
 ……欲しいな。
 一応溜め込んだ魔力を消費して結界を生成する装置は持っているが、絶対防御を冠する程堅くはない。
 もし、これが解析できたなら……やることが決まったな。

「えっと、貴方たちは私をどうする気なのですか? 場合によっては――こちら少しは、抵抗しますよ」

「ほっほっほ。儂たちは、ただ新たな『超越者』に挨拶してほしいだけじゃよ。先程のアレも、皆が待つ場所へ転位しようとしただけじゃからな」

「へー、そうなんですかー」

「反応が薄いな……まあいい。爺、頼む」

「任せておけ――行くぞ」

 そうして、再び光に包まれ――



「さて、帰りますか」

 再び死に戻った俺は、今度こそ『アイプスル』へと帰還するのであった。
 このとき、ふと思った言葉――二度あることは三度ある。
 ……うん、まだまだ諦めていなかった。


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