虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
探索
「――お前が『超越者』か」
「いえ、人違いです」
俺とあの人との出会いは、こんな形で始まることになった。
……あ、回想とかそういう展開になるわけじゃないぞ。
たださ、E1に行く途中で怪しいローブを纏った男(のような声の持ち主)に声をかけられただけの話だ。
一応ファーストコンタクトを人通りの多い場所で行いたくなかったのか、先に耳の辺りでボソッと俺に会う場所を指定してきた。
……ここで俺が一度死ぬのは、ご愛嬌のことだよな(死因は吐息である)。
「嘘だな。お前からは、『超越者』特有の反応が……む? おかしい、確かにさっきまでは有ったはず……」
「えっと、やはり人違いでは? わ、私はその……チョウエツシャ? と言った単語に心当たりはありませんので」
「お前、さっき結晶の辺りで、強そうな奴を観ていないか?」
今日は色々とやることがあり、アイプスルから何度か結晶の場所へ戻って来ている。
こいつは、そこから何かを感じたのか?
「強そうな奴、ですか?」
「そうだ。ソイツは『超越者』と言う世界の理から外れるような力を持った存在。いずれ何かしらの形で有名になるだろう」
「そうなんですか……。それで、どうしてそのチョウエツシャを、私と勘違いしたのですか? 何か理由でも?」
「『超越者』が行動を起こすと、何かしらの形で世界に歪みが生じる。それを察知した場所に、どうやらお前が重なっていたらしい」
「……なんだか申し訳ないようなことを、してしまったようですね」
「いや、気にするな。お前でもう5人目だ」
結構間違えてるな。
……もしかして、俺とほぼ同じタイミングであそこに現れた奴の中で、上から順に強い奴へ訊いていたんじゃないか?
今回は俺独りだったが、今までは同じぐらいのタイミングで他のプレイヤーが現れ、そのせいで死んでいたからよく分かる。
「俺はもう少し、その『超越者』を捜索している。何か分かったら、どこのギルドでも良いからその旨を伝えてくれ」
「そのような方法で伝わるものですか?」
「ああ、『指定依頼OOに関する情報』と言えば、どのギルドであろうと必ず聞いてくれるだろう」
「なるほど、符号があるんですね。分かりました、気になることがあったら報告します」
「ぜひ頼む」
そう言うと、男はこの場から去っていく。
(……ふ~、バレなかったか。一時はどうなるものかと思っていたぞ)
彼の頭の中では、『超越者』=『強い』という式が成り立っているのだろう。
そんな考えのままじゃ、いつまで経っても俺を見つけることは不可能……って、今見つかってたんだよな。
「あの男が何の目的で俺を……いや、『超越者』を探していたか分からないからな。とりあえずは、また引き籠るかな」
嗚呼、普通のプレイヤーらしい冒険がしたいだけなのにな。
目から溢れ出す液体を拭い取り、通りを歩いていった。
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