虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
覚悟の試練 前篇
『――貴様はやり過ぎた。よって、罰を与えるべきだと考えた』
「へ?」
そう、イベントは起きたのだ。
突然足元に漆黒に輝く魔方陣が展開され、俺は謎の空間に飛ばされた。
上下の間隔も無く、足元がどこにあるかも分からない。
宙を彷徨う不思議な感覚と共に、何処からか聞こえてきた不思議な声へ耳を澄ます。
『生と死の境界は曖昧であってはならない。お前たちプレイヤーは、ただでさえそれが放漫であるのだ。故に、お前のように死を超越した存在はさすがに看過できない』
「……あ、あのぉ」
『本来生物とは、魂魄が肉体から乖離した時点で死ぬ。スキルによって再定着を行う者や魔法により移し替える者もいるが、それはある程度の対価を支払っている。……だが、お前は違う。何の対価も払わず、延々と死と再生を繰り返している。お前たちの依り代は、再起するまでにかなりの労費が支払われる代物……それを、お前は冒涜していたのだ。
――覚悟はできているのだろうな』
「…………いえ、それなら俺を簡単に死ぬような虚弱体質にしないください」
凄い真面目そうな話をしていたのだが……すみません、ほとんど聞き取れなかったんですけど。
いや、今がシリアスな場面だということは分かっていたんですよ?
でもさ、何度も死に尽くしているのって、100%俺だけが悪いわけでもないじゃないですか。
「俺だって、他人の大声を聞いたり息を浴びたりするだけで死ぬ体でなければ、あのような道具は創りませんでした。しかしアレが無ければ、俺は一生一つの場所にいなければいけませんでした」
『そうすれば良かっただろう。それこそが、お前の望んだ選択の結果だ』
「いえ、俺が望んだ未来には、間違いなく家族が必要です。あのままずっとあの世界にいても、俺は自身の描く未来には辿り着くことができません。それを求めるため、いつかは必ず同じことをしたでしょう」
『……そうか。私が納得できるかどうか別だが、お前にもお前なりの覚悟があることは理解した。人間とは、傲慢な生き物でもあるのだからな』
「え? あ、はい」
『ならば、本来は受けることは無かっただろうが、お前にはクエストを受けてもらう』
ピコーン
そんな求めていた言葉と共にUIが突然目の前に出現し、その内容が展開される――
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クエスト:『■■者への道:■■』
生と死を冒涜せし者よ、汝に覚悟はあるか
基本報酬:称号『■■者:■■』
このクエストは強制受注となります
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『お前の覚悟、しかと見せてもらうぞ』
「……なんか……」
求めていたクエストと違う!!
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