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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

クエスト 前篇



 基本的にクエストというものは、各ギルドに掲示されている。
 仲介料やら年会費の分だかで一部報酬料を持っていかれるが、初見の者からでも依頼が受けられる仕組みなのだ。
 そこで優れた功績を残せば、その依頼人からの追加依頼も来るかもしれないし、優れた貢献を知った別の者が、ソイツを指定して依頼を出してくるかもしれない。

 さて、こうして基本的なクエストの説明を行っているわけだが……こういうとき、後に続く展開は二つある。
 一つは、そのまま基本的な方法でクエストへと挑んでいく。
 もう一つは、その方法を何らかの理由で取ることができず、別の方法によってクエストの受注を行う。

 さて、どっちだと思うか?

◆□◆□◆

 クエストを求め、生産ギルドの掲示板を穴が開く程見ていた俺だが、突然ギルド長に呼び出され、言われた第一声が――

「ツクル君。君は依頼を受けられないよ」

「……へっ?」

 色々とツッコミたい部分もあるが、とりあえず大事なヤツを。

「どうして……どうしてクエストを受けられないのですか!?」

「ああ、ゴメンゴメン。正確には。各ギルドに掲示されているクエストは、だよ」

「ん? 全ギルドのですか?」

 俺が居る生産ギルドはもちろん、他には冒険者ギルドや魔法ギルドや傭兵ギルドなどもこの世界にはあるらしいのだが……どういうことなのだろうか。

「ギルドの依頼は、その人の貢献度と依頼の難易度で受注数が違う……そう言えば、理解してもらえるかな?」

「……ポーションの依頼、難易度は?」

「ランクEX、世界を揺るがす危険性もある重大な物だからね。申し訳ないけど最高難易度として登録してあるよ。それを受けている間は、ギルドで受けられる有料のサービスが全てタダになる代わりに……」

「他の依頼が受けられない? ……俺がどれだけ貢献をしようと、ギルドでは何もできないということですね」

 クエストが欲しければ、自分の脚で見つけて来い……そうギルドは言っているようだ。
 人としっかり関わろうとして、接触したら即死亡なこの俺が? 依頼よりもそっちコミュニケーションの方が難易度が高いわ!

「ランクを……下げて頂くのは?」

「ランクEXは、ある程度秘匿性を持つことができるんだ。この下のランクだと、他のギルドにも情報の開示をしなければならない。君はそういうのをあまり好まないだろうし、ギルドじゃなくても依頼はあるんだよ」

「そう……ですね、分かりました」

 今日の分のポーションをついでに提出し、俺はこの場を去った。
 そうなると、どこかでクエストを探さないとな。
 あんまり目立つ活動をしたいわけでも無いし、そもそも俺はそんなイベントには遭遇しないだろう。

 ポーション関連の依頼を地道に探して、貢献度を上げてみようか。


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