交渉 前篇

「――君には、このギルドに直接作った物を売ってほしいんだよ」

「つまり、専属契約ですか」

「端的に言えば、そういうことだね」

　専属契約、なんだか光栄な風に聞こえそうだが実際は違うぞ。
　契約内容によっては、完全に自由を奪われるのだ。
　条件を聞かないで適当に了承だけしていると、さっき話していた商人ギルドと似たような展開になるとしか思えそうにないな。

「えっと、まずこれらが君が売っていたポーションだよ。そして、こっちの方が生産ギルドでも随一の者が作ったヤツだ」

「(鑑定)を使っても宜しいでしょうか？」

「もちろんだよ。違いをちゃんと視てね」

　ま、自分のポーションは既に作成時に視てある。
　まずはそのデータを視てくれ――

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ライフポーション　製作者:

消耗道具:ポーション

HPを回復させるポーション

(詳細を調べるには鑑定のLvが足りません)

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　うん、至ってシンプルな内容しか記されていないよな。
　製作者の部分は隠せる機能を見つけたので隠しておいた。
　さすがにそこまですれば、多分バレないだろう……そう、思っていたんだけど。

　材料は星で育てた薬草だ。
　そっちもそっちで、ポーションを作るのに最適な薬草、的なテキストしか無かったので詳しいことはよく分かっていない。
　ただ、どちらにせよ言えることは――ＨＰが１の俺に、必要は全く無かったということだけだ。

　さて、お次はその隣にあるヤツを――

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ライフポーション　製作者:フリュム

消耗道具:ポーション

HPを回復させるポーション

(詳細を調べるには鑑定のLvが足りません)

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「……すいません。違いがよく分からないのですが」

「君、(鑑定)のLvは？」

「(鑑定)にLvは無いんですが」

「…………ん？」

　不思議そうな顔をするギルド長。
　まあ、一応クレームを付けたら貰えたスキルだしな。
　恐らく普通の(鑑定)より、劣っている物なのだろう。

「君、(鑑定)は持っているんだよね？」

「ええ、じゃないと訊きませんから」

「なら、このポーションを作ったのは？」

「フリュムさん、のようですけど」

「うん、ちゃんとぼくの名前のようだね」

　なんと衝撃の事実！
　ここにあるポーションの製作者は、目の前にいるギルド長だった(ギルド長であることにもビックリだ)。
　しかし、俺が本当に(鑑定)を持っているのかを疑っている？
　いやいや、そんなのすぐにバレるに決まっているじゃないか。

「まあ、人には誰しも言えない秘密があることは分かっているさ。だから、このことは口外しないことにしておくよ」

「あ、ありがとうございます」

「うん、なら代わりに事実だけを告げるけど――君のポーション、世界間戦争になる代物だからね」


　……へっ？