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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

星再生プロジェクト 中篇



 そして、あれから幾百の刻が過ぎた……わけもなく、ただひたすらに魔力を注ぎ込むこと数時間。

「お、やっと終わったのか?」

 どれだけ注入したか分からないが、ただ眩しいだけだった星の核の輝きが、突然収まったのだ。
 起動に必要なエネルギーを集め終わったから、待機状態に移行したって感じか?

◆   □   ◆   □   ◆

【■■■】の能力を解放
 制御権の一部を獲得しました
 詳細は、メニューにてご確認ください

◆   □   ◆   □   ◆

 すると、どこからかそんな言葉が聞こえてくる。……制御権? どういうことだ?

「“メニュー”……ん? 二枚目がある」

 今まではただ枠が目の前に表示していたのに、新たにもう一枚UIが出現した。
 基本的には同じような画面だが、機能がだいぶ少ないみたいだな。
 あ、ステータスは普通にあるや。

「“ステータス”……ああ、そういうことなのか」

 そこには、俺の知りたいことがハッキリと表示されていた――

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ステータス
名前:■■世界(変更可能)

SP:1/100

特殊性能
なし

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 あ、SPStar Pointは星命力らしいぞ。
 生命力と掛けているとは思うんだが、そのネーミングセンスはどうだろうか。
 そう、新たに追加されたのは、この星が持つステータスなのだろう。
 魔力を思いっきり注ぎ込んで、やっと1追加されたその異常なエネルギーこそが、SPというわけだ。

「ってことは、もう少し注いでいかないとまた止まっちゃうってことかよ。おいおい、これじゃあ俺はただの部品になっちまうじゃないか。さすがにずっとは嫌だぞ……そうならないための、装置なんだけどな」

 俺という存在がいなくなれば、SPを回復させる存在はいなくなる。
 それでは、鼬ごっこと同じような状態だ。
 なので、そのために別途で取り付けた装置が機能してくれれば……俺がそうなる未来は恐らく防げる。

「ま、色々と試したいこともあるし、今は満タンになるまで注ぎ込んでみるか」

 そうして意気込みを見せた俺だったが……それが終わるのはまた遥か先の話であった。

◆   □   ◆   □   ◆

???

「……プッ、ハハハハッ! 観たかい◆◆◆◆!? 彼は遂にやってみせたよ! 人が滅ぼし、神が見捨てたあの地を! 凄い、凄いや彼は!!」

 ■■■は笑い転げ、その様子を◆◆◆◆は呆然と眺めていた。

「(いくらなんでも速すぎる! ■■■様ならともかく、上級神ですらリソースを星脈に注ぎ込むのにはもっと時間がかかるはず!)」

「ヒーヒーフゥ~。いやー、◆◆◆◆。どうにも不思議そうな顔をしているね。確かに、彼が持って行った:DIY:の力もその原因の一つなんだけど、最も異常なのは彼自身だよ」

「……ツクルさんがですか?」

「うんうん。いくらあの力が神の力だとしてもさ、人の身に収まるはず無いじゃないか。まだ最初の状態だったときは、僕も収まるように保護してたけど……成長してからは、僕は保護を外していたはずなんだよ」

「……なっ!」

 ◆◆◆◆はその言葉に衝撃を受ける。
 それはつまり、彼が彼だけの力のみで神の力を振っていたことを意味している。
 才能を持たない者がそのようなことをすれば、一瞬で身を亡ぼすような所業。
 例え下地があったとはいえ、完全に神の力が掌握できていなければ、現人神にすらも不可能なはずであった。

「彼は……ツクルさんは何者なのですか?」

「数奇な運命に愛された、奇妙な地球人ってところかな? 彼にその自覚は無いし、地球でそれが開花することは……まあ、あんまり無かったね。細かいことは自分で調べるのが一番だよ」

「そう……ですね」

 ツクルの知らない所では、そうした会話が行われていたという。


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