虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
山再生プロジェクト 後篇
それからしばらくして、この世界全ての地形を把握することに成功した。
……長かったよ、それまでに一体どれだけのドローンが犠牲になったことやら。
お前たちのことは、きっと忘れないで未来永劫(AIが)語り継いでいくからな!
ドローンはこの地の反対側で集結し、そのことをこちら側に伝えてくる。
PCがドローン全ての情報を纏め上げ、デスクトップに表示された地球は……とても、丸い形を表していたのであった。
「……てなわけで、俺の手元には世界地図と地球が用意されている」
どうやらこの世界も、地動説がベースとなる星のようだ。
ここで天動説だ、とか言われたら、俺はどうすれば良かったんだろうな。
さすがにネットにも、天動説版の地球の詳細が書かれているわけじゃないんだし。
「そして地動説で良かったと思いながら、今日も今日とで作業を行っていくのである」
今回は……確か龍脈を探そうだのと盛り上がっていた気がするな。
地脈探査機も既に改造してあるし、龍脈版の源泉――龍泉もすぐに発見されるだろう。
でも、もう俺がやる必要は無いんだよな。
「……『SEBAS』、状況は?」
[ご主人様、既に設置は完了しています]
「そうか。では、始めてくれ」
[承知いたしました]
PCに備え付けられたマイクに向けてそう言うと、一気に文字の羅列がPC上に表示される。
そして、この世界のどこからか音が鳴り響き、大地が震えていった。
『SEBAS』とは、AIが成長した姿の一つである。
俺の指示通りに動いてくれ、俺の指示が無くても動いてくれる――まさに、執事の鏡のようなプログラムだぞ。
何やらネットで見つけた執事に甚く関心を抱き、いつの間にか自身をそう名乗るようになっていた。
子供の成長が速いってのは、今までで2回ほど理解していたのだが……やっぱり、それでもその度に感じさせられるな。
『SEBAS』は迅速に動き、龍脈の湧き出る地点に設置された装置を起動した。
装置が内包された膨大な量のエネルギーを使い、無理矢理そこで失われた力を復活させるのだ。
龍脈はその力の奔流を受け入れ、地脈以上に広い範囲の自然エネルギーを活性化させていった。
脈を通じて水が生成されて緑が絨毯のように敷かれていき、光合成を行って自然が満ちた環境が生成されていく。
えっと、俺はそんな様子を映像越しに見ているわけだが……色々と物理法則を超越していて何も感想が言えない。
なんで水が生まれてなんで緑が生い茂ってなんでそんな光景が何処までも広がっていくのだろうか。
地脈の時はここまではいかず、ただ植物の成長率が上がっただけだった。
……龍脈って凄いんだな。
だが、更にもう一段階上の脈があるらしいのだ。
世界にたった一つしか無い、星の鼓動とも呼べるその脈の名は――『星脈』。
最後は、それを探さないとな。
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