虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
山再生プロジェクト 直前
N1
今日は北に来た!
……あ、悪気は無いんだよ。
ただ、一人は寂しかったから、つい思ってしまっただけなんだ。
まあそんなわけで、俺は現在初期拠点から北に位置する場所にいる。
理由は特に無いが、ここがドローンの第一陣が飛んだ場所の中で一番最後の場所だから残ってたんだよ。
……うん、そもそも海があったS1以外、あんまり違いが無いんだよな~。
なので、今まで巡って来た場所にはいつも通り、俺の趣味と実験を合わせた作業を行ってきた。
そして、今俺の目の前には巨大な山が聳え立っている。
うん、その山はN2の方が近いのだが、麓であるN1から一度山を見たかったんだよ。
いやはや、まさか海と山がこんなに近くにあるとはな。
ドローン一機当たりが5㎞飛ぶようにできているから、どちらも初期地点から最大でも10km以内にあることが確定しているぞ。
「さて、ここでやらなければいけないことをしなければな」
海でも使った天候現象装置を使い、ある天候を生み出す。
――これで準備OKだな。
「それじゃあ、行ってみようか」
ここの拠点に置かれた転送装置を起動し、先程から言っているN2へと移動する。
◆ □ ◆ □ ◆
N2
「あーたまーをくーもーのー、うーえーにー出ーしー、しーほーおーのーやーまーを見ーおろーしーてー」
本来ならばまだできることの無い雲が、山の上にモクモクと下に広がっている。
そう、さっきの装置で発生させたのは雲。
それも、雲海と言える程に綺麗である。
そう、それはまるで、絨毯のように敷き詰められた雲であった。
これ、プログラムするのに結構苦労したんだよな……AIが。
ただのサラリーマンに、難しいことは分からないよ。
ネットと繋がっているし、できるかな~っと思って頼んでみたら……本当に、できるんだな。
それもこれも、ただこの歌を歌うためだけに行ったことだ。
別に、歌ったら海が豊かになる恵みの歌でもないし、何かを起動するための開放の歌でもない。
ただ、分かる人なら分かってくれる、愛すべき山の歌である。
「さて、今回は――火山だ!」
そんな目的を持つ俺だが、今は火口に立っていた。
山の中も覗けるし、雲海を見下ろすこともできる。まさにベストな場所だろ?
だがしかし、肝心のアレが無い……
「やっぱり、マグマも無いよなー」
この星が死んでいるのなら、高温を星の中央が放つことも無いだろう。
そのため岩石が融解されること無く、マグマも生まれない、と俺は考えている。
この場合、俺って何をすればいいんだ?
星を温める? もうそれって神の所業な気がしてきた。
だが俺には、山に懸ける崇高な思いがあるのだ!
なんとしても、この山を蘇らせなければならない!
「待ってろよ――ハイキング!!」
絶対に成し遂げてやる!
そのために俺は、ひたすらネットで検索を行っていった。
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