屋久魔杉

「……うん、さっぱり分からない！」

　初めて植樹をしてから少しログアウトをして、再びこの世界の時間は加速していた。
　本当に、どんぐらいの長さで進んでるんだろうな。
　他のワールドのプレイヤーたちは、そこに住んでいるＮＰＣに月日を確認することでそれを理解したようだけど……未だに原住民を確認できていないこの世界で、俺は一体どのようにしてそれを尋ねればいいのだろうか。
　そもそも、ここって人居ないよな？
　もうモザイクだらけの情報しか出てこない世界に人が居たら、それはもう超人とか化物とかの称号が合いそうじゃん……アレ、じゃあ俺は？

　……細かいことは気にしない方が良いな。
　今は、樹木に関する報告の話だった。

　俺の目の前には、思いっ切り成長した植物がドーンと並んでいる。
　高さは種類によってまちまちだが、ファンタジー成分を吸収しているからか、地球の物よりも少し大き目だな。
　と、ここら辺は既に初期拠点で確認してあることだ。
　――問題は、それが全ての木々に関することだということだな。

「つまり……施設はあんまり関係無く、成長していると。:DIY:の影響がデカいのかな？　どう森ならヤシの木が門の所で育ってるぐらいのありえなさだぞ。全部の木が育つって」

　例え話をしよう。
　全く同じ環境で二つの植物を育てました。
　一つは、日中は燦々と太陽が照り付け、夜は極寒の冷気に震える大地に育つ植物。
　もう一つは、殆どの時間を水中の中で過ごし、岩に張り付いて生きる植物。

　これらが同時に育つと思うか？
　今の例、そのままぶっちゃけるとサボテンと海藻だぞ？
　まあ、海藻を埋めたわけでは無いが、陽生と陰生の植物が同じ場所で隣り合って育っている……みたいな感じか。

「そして、問題はこれか……」

　そう呟く俺の頭上には、この世界にはありもしない天をも貫いていそうな、巨大な樹木が立ち聳えている。
　うん、俺もビックリだ。

「縄文杉って指定で育つんだな」

　そう、俺が埋めたのは縄文杉と言って出現させた木の苗だ。
　一応植林された屋久杉のことを地杉、樹齢が1000年未満は小杉、と大きさによって名称が変わるんだが……魔力を吸い上げた所為なのか、凄い成長してるな。

「もうこれって、世界樹って言っても問題無いレベルに育ってるよ」

　目視による測定は不可能。
　ＰＣによると、1500ｍはあるとのことだ。
　何処のハンター×２で出た、成長が止まった世界樹なのだろうか全く。

　しかも、未だに成長は続いているらしく、このままだと本当に宇宙ぐらいまで行ける程に高くなるそうだ。
　おっ、宇宙旅行か。家族で行ってみるのも楽しそうだな。


　宇宙船、造ってみよっかなー。
　今日の俺はそんなことを考えて、杉を眺めていた。