虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
神様談
『彼の様子はどんな感じだい?』
『■、■■■様。どうしてここへ?』
『彼を見に来る、という重大案件以外の理由があるのかい?』
『……そう、でしたね』
■■■は、◆◆◆◆へと問う。
彼とは、滅んだ世界へと旅立った唯一のプレイヤーのことである。
■■■が彼の様子を窺ってから、現実世界で1週間が経過した。
用意された膨大な量の仕事も終わり自由となった■■■は、再びそんな特異な存在を観察を行うため、今までそれを行っていた◆◆◆◆の元へとやって来たのだ。
『順調に、環境を整えていますよ。これが、今の世界の様子です』
『……おお! 緑が蘇っているねぇ!』
『あくまで彼の居る場所にだけですが……。それでも死んだ世界に命を育ませることができただけで、聖者としての功績を示しております』
『うんうん。彼が【救星者】以外の道を選んでいたなら、確かにそうなったかもね。だけど……彼の運命は変わらない』
本来、彼の居る世界に命が芽生える可能性は0だ。
小数点以下で0以外の数値が存在するわけでも無く、完全な0――不可能であった。
しかしそんな彼に与えられた唯一のスキル――万物創造の力は、世界の因果を歪ませて命を創り出した。
不可能を可能にするそんな力……奇跡という概念を無理矢理引き起こす、神にも等しい力である。
そんな力を人の身に宿す、それは多大な代償を元に行う事象である。
彼の場合、万物創造の代わりに他の才能全てが奪われた。
彼は一生生産しか行えず、武器を扱うことも、魔法を使うことも、冒険らしい冒険を行うこともできないのだ。
運命は定まった。
彼はそのゲームで行うことは、延々と再星することのみである。
命を芽生えさせ、最後には星の命をも蘇らせる。
どこまで時がかかるか、創造神は気にしていない。
神と人の時間の概念は全く異なる。
長い寿命の間に、いつかできれば良い……そんな考えであった。
『まあ、でも。人の身のままだったら確かに運命には抗えない。だけど、神に彼が到達すれば……』
『それこそ、本末転倒ではないですか。神だからこその再星を、人の身で行う。それをするために彼を犠牲にする……そう考えているのですか?』
不満げな表情を浮かべる◆◆◆◆のその言葉に、■■■は笑いながら答える。
『ハハッ。◆◆◆◆は変なことを考えているね。僕はね、信じているんだよ。彼みたいな面白い人が、僕たち神である想像しえない方法で、あの世界を再星するってさ。いつの世も、特別なことを成功させて神に選ばれるって話は存在する。神が全然信じられていない今の世で、今回は彼がそれに選ばれた……それだけの話だよ』
■■■は、◆◆◆◆の映像を眺めながら呟いていく。
『うんうん。そろそろあの力も成長する。それがあれば、きっと原初の力を引き起こすことはできる。……さぁ、僕に魅せてくれよ。奇跡ってヤツをさ――ツクル君?』
楽しそうな■■■の笑い声が、その空間中に響き渡った。
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