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もののけ庵〜魍魎の廓〜

尊(みこと)

道世と尊禍






  正反対の道世と尊禍。仕事前の真昼間など、二人はどんな会話をしているのだろう。仲がいい事もあって、自由時間はどちらかの部屋でくつろいでいる事が大半だ。

 おや、ジリジリ鳴く蝉がジリジリと太陽に焦がされるような気分になる猛暑の日。道世の部屋で上半身の着物をこれでもか、と肌蹴てこれまたこれ見よがしに大股開きで両膝を立てているのは他でもない、尊禍だ。
 気まぐれで今日は男に扮しているから問題はないが...忙しそうに手を動かしつつも、そんな尊禍を眉根を寄せてじとりと睨み続けているのは道世。流石にずっと睨まれていては尊禍も舌打ちをしてやっと道世に煙管の煙を吹きかけながら気だるそうに聞いた。

尊禍「なんだよ?」

道世「ゴホッゴホッ!ちょいと何すんのさ!人の部屋で煙管燻らせて、おまけにその部屋の持ち主が布団干そうとしてるってのに!邪魔で仕方ないよ!」

尊禍「布団干し〜?ンなもん、お付きの禿か振袖新造にでも頼めばいいだろうが。太陽の香りがする寝具よりゃ、煙管の甘い寝具のほうが遊郭って感じで俺は好きだがねぇ。」

 クックッと笑いながらあっけらかんに話す尊禍はいつもの事のようで、猫の耳を苛立ちげに動かしながら昼間の少女の姿で道世は仁王立ちして言い返す。

道世「おあいにく様、私にゃ煙管の紫煙の香りを好む酔狂なお客人はいないのさっ!」

 まるで兄弟のように無遠慮に物を言い出す二人はとても仲睦まじく微笑ましかった。様子を見て分かるように、二人は親に売られた不幸な身ではない。しかも、もののけ庵の遊女や遣り手、楼主の誰ひとり強制を強いられて遊郭にいるのではないのだ。では何故?

 尊禍「おう、道世。お前そのちっこい身体で布団干しなんざ大仕事だろう。借せ借せ、それより今夜は賑わうぞ。夜更けに雨が降りそうだからな。」

 想像するより遥かに手際よく布団を綺麗に大きな窓枠に干しながら尊禍は言う。確かにそうだねぇ、とでも言うように道世も頷いた。
 花街は男女の秘めやかな逢瀬の場所。雨が降ると傘をさして顔が見えにくくなるため、春を買う連中は雨の日を好んだのだ。

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