職業通りの世界
第41話 ビルみたいな建物がある街
「勇者様でしたか!!先程まで失礼な態度で接してしまい、申し訳ありません!!」
「別に気にしてませんから入っても良いですか?」
「もちろんです!」
 証明書を見せると、さっきまで唾を飛ばして来そうな態度から一変して腰を90°に曲げて引きの姿勢になった。それは何となく予想出来たので、追求せず、さっさと通してもらう。
 入ってみると、街の中心に外からでも見えた円柱の建物がそびえ立っていて、その建物を囲うように木造の住宅が並んでいる。この世界では住宅は木造が主流なのか?
 円柱の建物に続く門から出ている道に馬車を走らせると、建物の出入り口に人が立っていた。キッチリとしっかりとした服を着た男は俺たちの馬車に近づくと、営業スマイルで話しかけてきた。
「外から来られた方ですよね?馬車をお停めになられるのでしたら、入ってすぐ左手に評判の良い預かり屋がありますので、そちらをご利用ください」
「ありがとうございます。因みに宿と魔石を換金する場所を教えてもらっても?」
「宿は4階へ、換金は冒険者ギルドへ行く必要がありますので6階へ行ってください」
 礼を言うと、頭を下げて次の馬車へと走って行った。この建物の係員だったのか?
 言われた通り、接待の良い意外と若い店員が居る預かり屋に馬車を預け、フロアの端にあった階段を登る。
「これって完全にビルだよね?」
「ええ、デパート感が強いですが」
 食品や薬品が売られている2階を軽く覗きながら話す。メサとメイカは興味津々な様子で見ていたので、少し強引に引っ張って階段を登る。
「昔に来たって言う勇者さんが建てたのかな?」
「分かりませんが、確かにこれを建てるのは大変だと思います」
 武器や鎧が売られていた3階を軽く覗き、メサたちを引っ張って階段を登りながら考える。
 恐らく10階くらいまでありそうなこの建物を建てる事がこの世界で出来たかと聞かれたら確かに疑問だ。
 まず、この世界に建築の構造とかがしっかりと確立されているのか、そしてその構造は自重に耐えられるほどの強度を持っていると証明されているのかも分からない。
 考えているうちに4階に着いた。宿屋は4つあって、凄い競争社会になっていた。
「…先に換金を済ませましょう」
「そうだね…」
 嫌な事を後回しにするわけでは無いが、宿を決めた後で換金に行く時に、他の宿屋の妬みとかがこもった視線を受けながら行くのは気まずい。
 先に換金を済ませるために、ビリヤードらしきものや何かのカードゲームをしている娯楽施設が多い5階を通り過ぎ、今度は冒険者たちで騒がしい6階に来た。
 係員の言っていた通り、本当にフロアいっぱいが冒険者ギルドになっていて、正直階段室から出たく無さそうなお嬢様たちだが、視線とか気配には敏感な人が多い冒険者ギルドで気づかれないはずもなく。
「あ?何の用だ!?」
「良い女連れてんなー!」
「まだ成人したての連中ばっかりじゃねぇか」
「俺はそれくらいが好きなんだよ!賛同するやつの方が多いんじゃねぇか?」
「私もあれくらいがこ の み !」
 お嬢様たちを下賎な奴らが下心が丸見えな視線を向けている。それだけで俺は我慢出来ない!あと、あのオカマも。
「……魔石の換金所はどこだ…」
 スキル威圧視を使い、格下の奴らは冷や汗をどっぷりとかいて倒れたり、腰を抜かしたり、失禁している。
 一部の何とか立っている男の胸倉を掴み、場所を聞き出すと、ここから右側に見えている受付で出来るみたいだ。
「俺が1人で行きますからお嬢様は2人をよろしくお願いします」
「うん、分かった…」
 お嬢様が心配そうに見ているので、なるべく早く済ませるために倒れている男や腰を抜かしている男たちを足で退かしつつ歩く。
 着いた先の受付に居た受付嬢は、怯えながら何かを言っているがよく聞こえないので無言で魔石を置く。
「換金してくれ」
「ひゃ、ひゃい…」
 せっかくの美人が台無しで、涙を軽く流しながら鼻をすすり、魔石を持って奥へと引っ込んだ。あれくらいの耐性が無いのによく受付嬢が勤まるな。
「…き、金貨8枚でしゅ」
「ああ。一応迷惑をかけてすまなかったな」
 本当に社交辞令として軽く頭を下げた後、金貨を受け取って歩いて来たところを引き返した。
「何枚になったの?」
「8枚ですね」
「すご~い!」
 お嬢様はすっかりと元気を取り戻して階段を降り出す。
 この世界では金貨しか貨幣が無い代わりに、釣りが出る場合は店の人がサイン付きのレシートみたいなものをくれる。そのレシートで金貨1枚になるまでレシートに書いてもらうだけで買い物が出来る。
 不便というかややこしいシステムだが、金貨以外の貨幣の価値とかを覚えなくて良いだけ楽と言える。
「後は宿屋だけですね…」
「うわ~、陸人交渉よろしくね」
「お任せを」
 やけに静かなメサたちを連れて、かなり激しい競争社会が繰り広げられている4階へと向かった………。
「やっぱり視線がすごかったね」
「ええ、殺気と勘違いするほどに」
 結局、階段から一番近い《トゥーの宿》へと泊まる事にした。因みに成り立ちは昔の勇者に『東側にあるんだから#東宿__とうやど__#とかにしたら?』と冗談半分で言ったのを真に受けた当時の女将が付けたらしい。
「意外と良い宿ですね」「1部屋しか無いけどね」
 メイカが真実を言うとメサが後頭部を叩いた。聞いてないが、本当に双子なんじゃないか?と思うほど仲が良いな。
 今回、何故1部屋しか取らなかったかと言うと、節約の為だ。というかそれしか無い。
 何せ、2人分しか無い金貨で4人分の費用を何とか工面しないといけない。魔物退治をすればある程度安定するだろうが、少しでも節約はしておいた方が良い。
「俺は何もしないので安心してください」
「何かしてくれても…」「何かされても文句は言いませんよ?」
 お嬢様とメサは完全に疲れているな。さっさと寝させよう。
 それに比べ、メイカは黙り込んでいる。俺を信じているのかは分からないが、馬鹿みたいな事は言わないだけマシだろう。
「では、夕食にしましょう。そのままお風呂に入って欲しいので、このカバンにセットを用意してください」
「は~い」
 お嬢様の荷物を無限収納から取り出し、赤と青、緑の手提げカバンを作り出して3人に渡す。
 お嬢様は俺に背を向けて用意をしているが、2人はまるで用意をしようとしない。どうしてかと思ったが、そういえばこいつらは荷物なんて持ってなかったな。
 仕方ない、めっちゃ嫌だけどやるしか無い。2人のためにも。
「お嬢様、今から2人の下着を作るので失礼ですがお嬢様のものを参考にさせてもらえませんか?」
「へっ、変態!……って叫んでみたかった」
 変態と言われて一瞬、心から傷ついたが、言っただけだと分かった途端、心の底から胸を撫で下ろしている自分が居る。
「あ、ちょっと待ってください。今スキルをーー」
「はいっ!」
 何故か笑顔で差し出して来たのは、ピンクを基調として薔薇の模様の白のレースがあるブラを差し出して来た。お嬢様のブラをお嬢様が着ている姿を想像してしまいーー
「何想像してんだ!俺っ!!」
 ついつい声に出してしまった俺の叫びはフロア一帯に響き渡ったという………。
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