死んだら神になりました

叉龍

90-前進

「会敵予想地点」

高度1000mを飛行中。最大高度は10000mくらいだが、今回は索敵も兼ねているためこの高度だ。当然、飛行する時の魔力反応が最小になるように工夫されている。

「敵がいないな」

敵がいない。現在国境付近の最前線になるであろう地点を飛行しているが、敵が一向に見当たらない。普通なら宣戦布告をする前に兵士を国境にはりつけておくはずだ。そして開戦と同時に攻め入る。
あ、いや。宣戦布告じゃないな。外交官が来て神の信託によりって言って、我々は大陸連合に対し武力制裁を加えると宣言したらしい。王国はそれを宣戦布告と受け取り攻撃を開始…そうか。本部に情報が伝わってないんだ。教国には通信機器がない。俺たちが速攻で進軍したら王国から外交官がかえってくるまで数日はかかる。到着前にこちらから攻撃すれば敵は宣戦布告のことも知らないだろう。やらかしたか?
いや、もともとこの時代というか世界では宣戦布告なく越境するのが普通だ。この方法で間違っていない。
しかしあれだ。あとあと日本みたいに奇襲でいきなり攻撃されたとか言われても嫌だから一応宣戦布告はしておくか。

「このまま進むぞ。敵はいまだに準備中だろう。後続に伝えろ『我順調に進撃す、貴隊は敵の砦を制圧せよ』」

「了解」

「目標まで全速だ。魔導封止解除。全速だ」

魔力反応を最低限に抑えて偵察活動をするときは魔導封止という。まあ無線封止のようなものだ。
当然強い魔法を使えば使うほど魔力反応も大きくなる。そのためジェット推進を使った加速はできなかったが、魔導封止を解除した今、全速力で移動できる。敵首都なんてすぐだ。

「敵地上空で一度警告する。警告するまでは撃つな」

一応みんなにも伝えておく。そうしないといきなり突っ込むかもしれない。

「敵砦上空」

「スルーだ。友軍に座標を送れ」

俺たちの任務は敵本部への奇襲。ただ、警告をするため強攻・強襲になる。
第一目標、敵教会本部。敵砦の制圧はそのあとだ。俺たちが魔力反応をガンガン使っているため、大型の魔物か魔物の集団と思っているだろう。まあ通過するのは数秒で済むのだが。

「高度を10000に上げる」

高度10000m。普通ならば酸素濃度やら気圧やらで数分のうちに気絶してしまうが、そこは魔法でなんとかした。実用限界高度は12000。まあこの高度に追従できる奴はいないし、目視でもわからないから都市上空を通っても問題ない。高度10000mは旅客機が飛ぶレベル。人間が飛んでいても気づかれないだろうし、その高度を魔物が飛ぶこともあまりないだろう。加えて、その高さは海面と比べ空気抵抗が少なく、スピードを維持するのに必往なエネルギーが少なくて済むので飛行するときの効率もいいのだ。

「高度10000。さすがに高いな。雲の上だぞ」

雲の上ならば下からは絶対に見えない。あとは敵教会本部上空まで行くだけだ。座標を座標機能に入力してあるので雲で隠れていて下が見えていなくても問題ない。

「体感的にはこっちの方が速いか。
高度を落としずつ目標に接近する!
緩降下だ!」

目標までは少し距離があるが、緩降下で速度を維持しつつ、目標に出るときの高度を調整する。直進して急降下でも問題ないが、それだと少し時間がかかるような気がするので直線で動くことにした。

「目標までおよそ30秒!」

「総員急停止に備えろ!
教会本部を包囲する!」

包囲して降伏勧告して殺す。降伏すれば受け入れるが、どうせ徹底抗戦だろうから殺す。
もちろん無条件降伏。どこぞの大国の気分。それよりも圧倒的に楽だわな。

「目標確認! 包囲して宣戦布告、および降伏勧告を行う!」

開戦と同時に降伏という相当なレアケースだが、こちらは被害者なため問題はないだろう。

「目標を包囲完了。いつでもどうぞ」

「我々はスーデリア王国所属兵である!
先程貴国の外交官から宣戦布告を受け取った!
警告する! これより我々は教会本部を攻撃する! 降伏すれば条約に則り捕虜として人道的な扱いをすることを確約する!
繰り返す! 降伏すれば条約に則り捕虜として人道的な扱いをすることを確約する!
直ちに全部隊に停戦命令を出し無条件降伏を受け入れることを条件とする!」

条約に則りというのは連合国間での取り決めだ。まあよくある内容をざっと取り決めて、『人権』『個人財産』の尊重を主とした戦時国際法だ。教国が脱退する前なので当然教国も調印している。この頃の戦争としては一番乗りは占領地域の住人を好き勝手できる。奴隷にしたり金銭を奪ったりなどだ。騎士はそれを当然としていて、教国は少し渋ったが、神が人民を〜って言うと引っ込んだ。

「さて反応は一一『障壁』」

返答はライトボール。LEDライトレベルの光に殺傷能力があるのかと問われたら殺しはしないと答える。ただ、光で目をやられたり物理的な衝撃はあるため最悪死ぬ。
打ちどころが悪ければと言うやつだ。

「非常に残念だ。総員爆裂射撃用意!
絶対に外すな!
撃ぇてぇ!」

最精鋭連隊の一斉射。69発の弾丸が一斉に教会に降り注ぎ、爆発する。最精鋭であるがゆえに火力も高い。教会本部くらいなら簡単に破壊できる。さすがに戦艦クラスを相手するのは骨が折れるが、倒せないことはない。大和クラスは厳しいな。まあ直接乗り込んで中から掃除してやれば問題ないか。対空機銃の弾幕は危ないが、守り全力で突入する強硬策だったり、上空からこっそり近づいたり、水中から近づくなど手はいくらでもある。ただ厄介なことに変わりはないからできるだけ相手にしたくはないな。特攻をする気はない。

「我々はこの都市を占領した! 諸君らにはこちらの命令に従ってもらう!」

一応首都の住人達に占領を宣言する。

「02大隊は都市の治安維持。
残りは砦をつぶしに行く」

砦を潰しに行くけども、そもそも戦争状態だってことを奴ら知っているのだろうか?
いや、よくよく考えると魔法を使った長距離通信機もある。これは開戦したことを知っていると認識していいだろう。もし伝わっていなかったら後の教科書に『王国の進撃速度が速すぎて教国は開戦の情報を伝達する間もなかった』と載るだろうか。

「後続の前部隊に通達。『敵首都陥落。攻撃前に降伏勧告をせよ』」

おそらく本部より王国に近い地域は抵抗が激しいだろう。
正面からきている敵が後方の本部を陥落させたという。だれが信じるだろうか。
少なくとも俺は信じない。

「行動予定時刻を繰り上げろ。
意外に早く終わるかも知れん」

そういって俺たちは教国の奥へ、東へ東へと進んでいく。



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コメント

  • ノベルバユーザー197251

    ノベルバだけではなくなろうでも掲載して欲しいです。

    1
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