死んだら神になりました

叉龍

閑話-NW2 6

-飛龍騎士団 副団長-

「弾ちゃーく、今!」

上空からそんな声が聞こえた。
途端、爆発音。

地上軍の中ほどから爆発が続く。
その爆風で吹き飛ばされ、死の荒野に吸い込まれていく。

「横からだ! 戻れ! 戻れ!」

「だめだ! 後ろに道はない!」

「ええい! 突っ切れ!」

「なんだこいつは!」

「倒せ!」

「無理だ!」

眼下は地獄と化していた。
鳴り響く友軍の怒声
正面には敵の大部隊、一歩踏み込めば体が引きずり込まれる側面にはなぜか敵がいる。
そして背面は姿は見えないが爆破され続けている。

「な、なんなんだ、これは…」

団長がつぶやく。
そして俺はあることに気が付く。

「団長! 前方に…人?」

「そこの者! 貴様何者だ! ここで何をしている!」

すぐさま団長が誰何する。
おそらく王国の騎士団の人間だろうが…なんだこの威圧感。しかも子供から?

「総員対空戦闘用意! でっかい害虫が来たぞ! 敵はおよそ30! 特戦! 各個撃破せよ」

その少年が団長の誰何に応えず何か指示を出している。

指示を出している? 子どもが? 子どもの階級のほうが高い?
いや、子供しかいない?

ゴォォォという音とともに人が上がってくる。この中ではあの少年は低い方の年齢だろう。
なのに指揮官…相当な強者だ。

「害虫? …我々が、害虫? 栄光あるドラグーンが、害虫…」

「団長!」

相手の言葉に切れて団長が怒りをあらわにする。

「飛龍騎士団! 我々をコケにした賊どもを…殺せぇぇぇぇぇ!」

「飛龍騎士団といったな? 俺らは黒竜騎士団。アクテリアワイバーンどっちが
上か勝負をしないか?」

団長の突撃命令に彼は動じない。

「図に乗るなぁぁぁ! 小僧がぁぁぁ! 突撃! いけぇ!」

完全に切れた団長が再度突撃命令を出す。
ダメだ。それではだめだ。
年齢的にみるならば彼らは新兵。俺らも新編隊だが、入りたての新兵ではない。
しかし俺たちと彼らには決定的な差がある。
実戦経験だ。俺らは龍騎兵として投入されたばかり。連携や実戦経験などない。
対して彼らは、新兵といっても実践経験があるだろう。
魔物がいるのだ。すべての魔物は関門で防がれこちら側には来ない。
そして自然発生するような場所は極少数で、この死の荒野などが発生地域だ。
向こうでは魔物の討伐を生業としている者も多いと聞く。
このワイバーンは偶然弱ったワイバーンを繁殖させて飼いならせているのだ。

「三次元戦闘! 楽しい楽しい狩りの時間だ!」

あいつ…戦闘を楽しんでやがる…

俺たちは前衛と後衛に別れ、前衛は突撃を繰り返し、後衛は砲撃の用意をする。
前衛も突撃を繰り返しつつも用意を始める。

「魔力壁展開! 敵の魔法攻撃だ!」

な! ばれただと?
敵は即座に行動する。

「うわぁぁぁぁ!」

味方の断末魔
見れば自らの炎が球状になり自分を焼いている

「な! 操作を誤ったのか!?」

いや違う。ここまできれいに球状に操作を間違えるはずがない。
やつだ。奴がやったのだ。

「小隊戦闘!  第一小隊は正面!  第二小隊は右翼!   第三小隊は左翼をやれ!」

ダメだ! 撤退だ! こいつらには勝てない!
経験が違いすぎるのだ!

「放て!」

「うがぁぁぁぁぁ!」

まただ…また奴だ…
これは…敵ながら尊敬してしまうな…

「こ、後衛が…なんなんだ…あれは…」

「団長!  1回体制を立て直すべきです!」

「うるさい!  奴だ!真ん中の小僧をやればこちらの勝ちだ!  全員奴をやれ!」

「団長!  周りから狙われています!先にほかを潰してから…」

「うるさいぞ!  貴様!  この私に意見するというのか!  この場でたたっ斬ってやるぞ!」

「団長!」

ダメだ! くそ! どうにかして撤退案を!

「なあ、俺あんたみたいなやつうざくて嫌いだからどっかいってくれんか?  『衝撃インパクト』」

団長の乗っていたワイバーンごと吹っ飛んでいった。あの感じでは生きていないだろう。
俺は即座に撤退命令を出そうとするがそれは遮られる。

「なあ、あんた。俺の仲間にならないか?  気に入ったぞ」

なぜか勧誘された。確かに、この国のやっていることはただの侵略。何の正当性のない侵略行為をしていた。そして彼らはただの正当防衛。
我々に正義などはないものだということは知っている。
が、それでも祖国を裏切るということはできない。

「とても有難いが断らせてもらう。
祖国の行為が馬鹿な行為と言っても、やはり祖国を裏切るのはね。代わりと言ってはなんだが、この戦争が終わってから君のことを訪ねてもいいかい?」

ここから撤退してもよくて解雇、最悪の場合は死刑だろう。
戦後の生活を考えるのも悪くはない

「ああ。大歓迎さ。まあ、ここから逃げられたらの話だがな」

だろうな。そうやすやすと逃がしてくれるはずはないだろうな。

「じゃあまたいつか。『濃霧ミスト』総員撤退!  皇都で体制を立て直す!」

視界を奪い、ついでに魔力も適当に散らして動かしておく。
これで混乱してくれればいいがな…

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