異世界のバハムート

ロマノフ

第5章 オーク討伐

画して、オーク討伐戦は始まった。西の村の外れにある平野にオークの巣がある。歩いて20キロ程の場所だが、そこまでは牛車で移動をした。

シズク「なぁカエデ!戦いの時はどのジョブを使うんだ?」

カエデ「ああ、それならさっき気前のいい鍛冶屋の親父から、槍と杖をただで貰ったから、ランサーかアークウィザードかな。」

シズク「そっかぁ。それなら私もちゃんと暴れられ(そうだ。」

シーナ「貴方は、あまり暴れすぎないように!体力が少なくなったら、すぐに私の近くにくるんですよ?」

作戦はこうだ。
まずは、シーナ、シズクがオークの巣に向かって専攻、その間に僕が習得した水魔法を使ってオークを殺さずに閉じ込める、シーナはシズクを援護しながら、シズクがオークをまとめて無力化する。

牛車使い「おーい!お前らもうすぐオークの巣だ。ここから開けた平地が広がってるからまっすぐ進めば、オークの巣が見える。そこからは好きにやれ!俺はここで待機してるからな!」

シズク「おっちゃんありがとうー!」
言葉を放ちざまものすごい走力でオークの巣へシズクは走り出した!

シーナ「ちょ、シズクちゃん!あぁ!もうっ、なんでスマートに出来ないのよ!」

僕の意識は魔法をうまく扱う事だけを意識していた。
走っていく二人を他所に。僕は、前回の様にイメージを深めた。
この平野の地下には巨大な洞窟が広がっている、山脈から降りてきた水がその洞窟に溜まっているのだ。
その水を利用する。

シズクとシーナの動きを見計らいながら詠唱を開始した。
まずは魔法を出現させる場所を魔法陣で定める。光が杖から溢れ出し、空へ放たれる。

牛車使い「うっひょぉ!お前さんほんとに新人か?こりゃ、アークウィザードどころじゃないな。」

空へ放たれた魔力は、地と空を繋いだ。光は魔法陣を描き巨大なイルミネーションの様に輝いた。

シーナ「カエデの奴、始めたみたいね。シズクちゃん!私たちも始めるわよ!」

シズク「あいあいさー!」

シーナは、走りながら短く詠唱した。
シーナ「爆音!」
その右手からあと、100メートル程であろうオークの巣に暖かな光をした光球がすっと入り込んだ。

シーナ「よし!シズクちゃん、しっかり耳塞いで!」

シズクがその特徴的な耳を塞ぐのを確認したシーナは魔法陣を輝かせ魔法を起動させた。

ピッキーーーーーーーーーーンン!

5、600メートルは離れていたつもりだが、僕は耳鳴りに顔を歪めた。

驚いたオーク達は血相を変えて、武器を手に反撃に出てきた。

シズク「おっ!?思ったより出てくるの早いぞ?カエデはまだか?」

詠唱を丁度に終えた。地下からの水が地面から滲みだし、雨が逆さに降るかの様にその空に巨大な水球を生み出した。
魔法陣がその魔法の終わりを告げるように一度瞬き、うっすらと消えていった。あとはシズク頼りだ。

シズクは武装したオークをものともせず掴んでは水球に投げ、掴んでは投げ。

あっという間に、水球はたくさんのオークで満たされた。でも殺すわけにはいかない。なんてったって、命だ。

オークは遊牧民族のようなもので世界を旅をして回るらしい。普通旅先で乱暴をする事はないらしいが、その原因を探るのもこのクエストの大事なことでもある。その為にオークを無力化し、巣を探索し原因を明らかにする。

さて、作戦は次の行動に移った。
僕はその水球を維持したままオークを無力化するのに頭を抱えたものだ。オークの肺の気管はほぼ人間と同じだ。呼吸困難による、脳死までは約5分程度その前にオーク全員の意識を失わせる必要がある。幸いシズクの手際のいい行動により、三分ほどで戦闘要員のオークは無力化出来た。

水球の浮遊を解くと、すぐさま大量の水が弾けた。
見たところ動けるオークはいないようだ。まずは成功だな。

あとはシズクとシーナに任せよう。


シズク「カエデの奴。上手くいったみたいだね!私達もちゃっちゃ終わらせよう!」

シーナ「そうね。これ以上彼を目立たせてはダメよ!」

シーナ、シズクらはオークの巣へと駆けた。




シズク「まるで迷路だ!道なんて覚えられないよ?!」

シーナ「ええ、ほんとに。ジメジメしてて嫌な所ね。」

洞窟の中は薄暗く、歩くには不十分ではあったが、シーナの魔法により、ランプ程度の灯りをともして進んでいった。


あとから聞いた話だか、洞窟にはオークの背丈に合わせた通路が幾つも繋がっていた。オーク語で綴られた看板や標識。オーク達にとっては、旅の途中で出来た小さな我が家で家族と数年住んだ思い出の場所であるだろう。
そもそもオークと人間は差ほど仲が悪い訳では無い。貿易交渉やオークを主体とした鍛冶屋など、オーク語を話せれば良き友でもあるらしい。鍛冶屋の親父さんのところでも働いていた。あそこのオークはこのクエストをどう思っているのだろう。
そいつ自身も悪行の原因はわからないという、種族の輪を越え。親しんで来た人間は大切な存在だという。
 
シーナ「あとは私が魔法で道を辿るから、少し待ってて!」

シーナは続けて光を纏った杖を地面に1度だけ叩いた。すると複数の光が入り交じったオークの巣に向けて素早く駆けた。一寸ほどしてから、シーナは目を開き脳内でオークの巣の道を攻略した。

シーナ「こっちです!」



一方、カエデは。
気絶したオークの戦士達の上空を槍に乗って颯爽を駆け抜けた。
どうやら浮遊魔法は得意だ。なんでもかんでもおそらく浮かせられるのではないかと思えるほどに。
過去の記憶と実践できる力をもって彼はこの世界でのランサーの常識を変えた。
通常ランサーとは、槍での戦いを得意とする。それほどの機動力は無いが、長いリーチと巧みな技を持って戦う戦士だった。いわば戦士としての1種のベースである。
彼は浮遊魔法をもって、槍ごと自分をその軌道に乗せるという方法をとった。簡単に言えば、槍を魔女の箒のように跨り、リーチを極限まで伸ばしたのだ。移動を含めて。

カエデ「自分を浮かせるのはちょっと怖いからな。下手したらとんでもないところに飛んでいきそうだ。でも実践は初めてだからなぁ、通用するといいけど。」

カエデ「もうすぐオークの巣につくな。」

その時であった。
突如一瞬の閃光と共に、雷鳴が轟いた。

慌てて急ブレーキ。反射的に閉じた目を開くとそこにはたくさんの鎧の騎士達が余韻もなく佇んでいた。

状況が理解できないまま、ふと目の前に現れたのは光沢のある鎧を纏った女性だった。

その顔を見た時、僕は怖気付いた。人目で女性と認識できるのに、その夜叉のような目と表情は、大いなる威厳とこちらへの敵対心を最高まで引き出したような恐ろしいものだった。

あたりにはまだ雷が爆ぜた水を伝ってのたうち回る。
なびくその髪を優雅に翻し、すぅっと息を吸ってその女性はこう続けた。

「ルーキー冒険者よ。そのクエストを直ちに中止せよ!」

「我が名は、アルエ・ルグマンド!最高司祭の名によりこの場は私が預かる!」

その凛とした声は心地よく耳に鳴り響き状況判断を遅らせた。

アルエ「その者よ、直ちに仲間を連れ村へ帰れ。」



続く

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